2024年4月20日(土)

経済の常識 VS 政策の非常識

2013年7月30日

 昇進は企業の決めることである。人事はサラリーマンの最大の関心事で、誰もが不満を持つものではある。しかし、それがあまりにも不合理、不公正なものと認識されれば、どんな組織も存続できないだろう。組織に対するなんらかの貢献度に応じて昇進が決定されているに違いない。しかし、何が貢献か、どれだけ貢献したかはよく分からないことが多い。ともかく会社に長い時間いたことが貢献の指標になるかもしれない。残業代を払わなくてよければ、長くいた人間が昇進に有利かもしれない。こうなると子供を持った女性は不利である。男性が子供の面倒を見れば良いのだろうが、これまでは女性が主にその役割を担ってきた。

 企業が労働の成果を測定できれば、残業の多寡を競うような無駄な競争はなくなるはずである。女性管理職を増やそうとしている企業は、女性の多い企業であるとともに、その成果が見やすい企業でもある。売れるか売れないかは運もあるが、成果は分かりやすい。成果を出した人間に昇進で報いることが企業にとって当然の行動となる。

 経済産業省の調査によれば、女性比率の高い企業は利益率が高い(あるいは利益率の高い企業ほど女性比率が高い)という関係はあるが、女性比率を高めても利益率が上がる訳ではないという(経済産業省男女共同参画研究会報告「女性の活躍と企業業績」03年6月)。同報告は、男女を問わず能力・成果に応じて昇進させる仕組みが企業の利益率を高めるとしている。すなわち、能力と成果に応じて、労働者を処遇する企業の利益率が高くなるというのである。ここで再び元の問いに戻る。そもそも成果を測ることができるのだろうか。もちろん、企業はそのために努力しているに違いない。それが会社の存続にとって必要なことだからだ。

欧米で女性公務員が
多いのはなぜか

 では、もっとも成果を測ることが難しい政府部門はどうだろうか。私の見聞するかぎり、欧米では女性公務員が多い。私がより知識のあるアメリカでは、課長レベルの女性は特に間違いなく多い。ただし、政治任用されることの多い局長レベル以上には男性が多い。しかし、日本ではどちらも少ない。

 この違いはどこから生まれるのだろうか。公務員は、本来は専門家である。例えば年金制度を改善する場合、どこに問題があって、その問題をどのように解決できるのか。解決できるとしても副作用はないのか。あらゆる問題を整理して、上司である政治家に上げる。問題点を列挙する場合、現状の制度の認識と論理力と海外の事例の知識が重要である。同じような改善策を行った国があれば、論理力だけでは気づかない問題点も認識できる。そして、制度の改善策を提案する仕事は、本来9時から5時の仕事である。明日までに何かしたからと言って良い案ができるものでもないし、通常、明日までに何かすることが必要なわけではない。


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