2024年4月26日(金)

ルポ・少年院の子どもたち

2013年7月11日

 「そんな子たちですから体育にもついてこられないで、すぐに諦めてしまう。筋トレ(腕立て伏せなど)なんて一回もできない子がいます。ランニングもついてこられない。整列してまっすぐに立とうとしても安定しないで、だらーんとなってしまったり。一般の子たちよりも、かなり体力が落ちているんです。そこで、少年院に入ると1カ月間は「気をつけ礼」に始まる行動訓練を行います。まずは落ちた体力を回復させる期間があるんです。毎日規則正しい生活で3食食事をとって生活すれば、おおむね1カ月間あれば体力は回復してきます。体育はカリキュラムに組み込まれているので一年間を通して身体は毎日鍛えています」

新しいものへの挑戦と達成感

 そんな少年たちのチャレンジの場としての相撲大会。

 稽古は2カ月前から始まった。

 「2カ月間の稽古を通して自分がどれだけのことが出来るようになるかというチャレンジです。新しいものに挑戦して自分のものにしていく。相撲も礼儀作法もできるようになった達成感。それは目に見える成果として自信に繋がっていきます。我々の教育は1年間掛けて行うものですから、こうした短期間に効果が出て、彼ら自身が実感できるものはそれほど多くはありません。これがスポーツのいいところです」

行司も「本物」。式守錦太夫(しきもり きんだゆう)氏

 「当院の伝統行事として続けている大きな理由は「礼節を重んじる競技」だということです。ちょこっと頭を下げることと、きちんと礼をすることではまったく異なります。普段の生活から礼儀を指導していますが、こういった競技を通して伝えると彼らは素直に受け入れ、きちんと出来るようになります。号令を掛けて行うのとは違って、礼節も競技を構成するための要素なんだと理解することによって受け入れられるんです。礼を重んじることは、気持ちを養うことになりますので大きな意義があります」

 「また、本格的な行司や力士が来て指導してくれます。少年たちにとってプロに接する経験が大切なんだと思います。大学生の相撲部とか地域のアマチュア相撲ではなく、ここでは全てが本物です。相撲協会からメダルまでいただけるんですから、全国でもかなり珍しいケースだと思います。本物だからこそ、少年たちは真剣になるし、胸にぐっと来るものがあるんだと思います」


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