少年院では、少年たちが二度と犯罪に手を染めないように導くため、どのような教育が行われているのか。社会復帰を控えたある少年と、その担当法務教官にインタビューした。
A少年が少年院に入ったのは15歳。すでに両家公認の婚約者がいて身ごもっていた。
中学時代から解体屋で働き、東日本大震災から4カ月後には被災地に入り瓦礫の撤去作業に加わった。道が失われ、歩くところもない中をひたすら道具を担いで現場に向かった。その荒涼たる景色に「自分がいくら頑張っても何も変わらないんじゃないか」と絶望感を覚えた。片道1時間以上も掛かる道程は、臭気がきつく虫やハエがまとわりついた。「帰りたい……」。心が折れそうになった。けれど左右別々の靴を履いて、失った家族を探している被災者たちを見て胸が痛んだ。「つらいけど、仕事をしているところを見せたい」と思った。
作業は1週間。被災地では車の中か持って行ったテントに寝泊まりしたが、最終日だけは壊れたホテルに宿泊した。その夜は自衛隊が引いたお風呂に入り、体を休めることができた。
「仕事をしているときは不良仲間とはつきあっていないんです。充実してたんです。それなのに、ほんの半年くらいで取り返しがつかないほど変わってしまいました」
と自身の過去を語った。
上級生が良いお手本に
全体の秩序にも繋がる
社会復帰を間近に控えた少年と法務教官に会うため、5月某日 茨城県の初等・中等少年院「水府学院」を訪れた。
水府学院では全体が4つの寮に分けられ、各寮約20人が集団生活をしている。そこに5~6名の職員がいくつかの勤務形態に分かれ24時間体制で指導に当たっている。当直のときは、少年たちとはほぼ同じ空間の中で過ごしていることになる。
さらに隣接する官舎では、緊急時に職員がすぐに駆けつけられる体制が整えられていることも、この仕事の特殊性を表している。
いったい職員に心の休まる時はあるのだろうか?
その疑問を佐藤淳次長にぶつけたところ「あるような、ないような、ですね。でも、これが私たちの仕事ですから」と飾り気のない答えの中にも仕事への気概が溢れていた。