「あとは婚約者から手紙をもらい「頑張れ」って書かれていて心強かった。応援されていると思ったら、ただ帰りたいという思いから、頑張ってから帰りたいと思うようになって、資格を取ったり、勉強できるようになろうと変わっていったんです」
「それからは周りと打ち解けて、素の自分が出せるようになっていきました」
以前は「結果が全て」といつも結果だけを求めて、自分をダメ人間だと諦めていたが、今では結果よりも努力することが大切だと知り、努力し続けることに充実感を覚えている。目下漢字検定3級にチャレンジ中で、毎日休まず勉強していること自体が楽しいと思えるようになってきている。
また、「窮屈な中でもみんなでルールを守って、楽しむことが大切なんだと知りました。たとえばラグビー講座で仲間を応援したり、みんなで笑い合ったりすることも。これが本当の自由なんじゃないかなと思えるようになったんです」とも語っている。
自身の変化の中でも一番変わったところは、先のことを考え「今」を行動するようになったことだ。以前は今が楽しければそれで良かった。集まって騒いで、そこに安心感があった。周囲から否定されたり、社会から除外されているような視線を感じていたから、同じような仲間といることで安心感を得ていた。「それがみんなといっしょにいた理由でした」と今ではそれが自分の心の弱さだったことに気づいている。
「今では一人になりたいし、自分と向き合いたい。今なら一人でもいられると思う」。それに非行仲間よりも「子供といっしょに遊びたい」と思うようになっている。
社会復帰を目前に控えた今の思いを聞いてみた。
「以前の仲間は地元にいます。彼らは自分を探し求めてくると思います。覚悟の上です。でも来たら『子供がいるから』と断らないとだめ。父親としての自分の責任です。18歳になったら自衛官候補生を受験したい。そのためにいま勉強しているんです。家族を安定して養っていくためには自衛隊だと思っています。これ、水府学院で気づいたんですが、日本は恵まれた国です。海外には貧しい国々がたくさんあって、困っている人たちが大勢います。自分は自衛官になって、そんな国の人たちのために何かしてあげたいと思っています」
T教官のまなざし
「彼は元々、暴走族に入っていても暴力をふるうような子ではありませんでした。人の役に立ちたいという思いが強い子で、小学生の頃から消防士に憧れていたようです」
「両親が離婚してさびしい思いをしてきたので、自分が家庭を作ったら子供にはさびしい思いをさせたくないという子なんです。いまでは父親になることの自覚や責任をひしひしと感じています」
本稿取材にあたって、水府学院の職員の方々には多大なるご協力をいただきました。深く感謝しております。 (後篇につづく)
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