2024年11月24日(日)

ルポ・少年院の子どもたち

2013年7月11日

 その後、4名の力士と行司の式守錦太夫(しきもり きんだゆう)氏が紹介され、新しくなった土俵まつりと模範稽古、ぶつかり稽古、少年同士の取り組みへと進行していった。

土の上に転がされながら…

 話は前後するが、取組前の準備運動を見た。驚いたのは股割りしたときの柔軟なこと。ほとんどの少年たちは、入ってきた当初、それまでの生活が不規則、不摂生であるためにまっすぐに立つこともできないような子が多いと聞いている。それがしっかり四股を踏み、股割りをして上半身がべったりと前に付く少年が半数近くいたはずだ。それだけでも、この相撲大会が当日だけのお祭りでなく、入念に準備されたものだと容易に想像された。回し姿に照れがなかったことも同じ理由によるものと思われる。

2人がかりでも、びくともしない力士

 ぶつかり稽古では、プロの力士が交代しながら100名を超す少年全員に稽古をつけた。押し倒され、担ぎ上げられ、投げられ、転がされた。一対一、二対一、三対一と少年サイドは人数を増やして向かっていくが、当然のことながら笑って受け流された。プロの力士が相手なのだから、相撲の礼儀作法に則っているのは言うまでもない。きちんと出来ていないときは、その都度親方から指導が入った。

 4人の中には18歳の力士も含まれている。まさに彼らと同世代なのだが、その分厚い胸に弾き飛ばされ、何を感じながら土の上に転がされたのだろう。その姿が社会復帰後の彼らに見えなくもない。正直なところ、もっと投げられ、もっと転がされ、土に塗れればいいと思っていた。どんな人だって、社会に出れば自分の思い通りにいかないのは当たり前。全力でぶつかっても、びくともしないこともあれば、無様に転んで土を噛むことだってある。それでも腐っていられないのが人生だ。社会は院内の相撲よりももっともっと厳しいのだから、今のうちに散々に投げられ転んでおけばいいと思っていた。

 「相撲の練習は2カ月前から始まり、体育で毎日筋力トレーニングをしていても四股を踏むのは苦しかった。でもそれに慣れてくる頃にぶつかることが楽しくなってきました。今では相撲の礼がしっかり綺麗に出来るようになったと思っています」

 と取り組みを終えたばかりのA少年に話を聞くことができた。

 全ての取り組みが終わり個人戦、団体戦の上位者が表彰され日本相撲協会からメダルが贈られた。


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