司法制度改革をめぐるイスラエルの混迷はネタニヤフ首相が3月27日、法案の採決を1カ月間延期したことで小康状態となった。ヘルツォグ大統領の仲介で妥協を探る協議も始まったが、先行きは全く見えない。そうした中、首相とバイデン米大統領が批判合戦を展開、首脳同士の異例の〝場外乱闘〟で同盟関係の亀裂も深まった。
真夜中の反発ツイート
批判合戦に火をつけたのはバイデン大統領だ。大統領は28日、「極めて憂慮している。このまま改革を進めてはならない。撤回を望んでいる」とネタニヤフ首相のやり方を批判。記者団から首相の訪米が予定されているのかを聞かれ「近いうちにはない」と突き放した。
この発言に首相がすぐに反発、「イスラエルは主権国家だ。決めるのは国民の意思であり、親友(米国)を含めた国外の圧力に基づいて決めるのではない」。このツイートは29日の午前1時投稿で、首相がいかにカチンときたのかを示すものだろう。
バイデン氏の発言にはネタニヤフ政権のメンバーから「イスラエルは米国の州の一つではない」と反発が広がり、米国でも議会共和党から「同盟国に対し、けしからん」といった批判が噴出。その後首相は両国関係のこれ以上の悪化を懸念してか、米国主導の「民主主義サミット」でオンライン演説、「両国は時折、意見が食い違うが、同盟は揺るがない」と力説して見せた。
2人は元々そりが合わず、特にバイデン氏はネタニヤフ政権がパレスチナ国家との「2国家共存」を否定し、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のイスラエル併合論を容認していることを強く批判してきた。司法制度改革についても民主主義の三権分立が侵されかねないとして反対派を支持、首相に自制を促してきた。