代償をパレスチナ人に払わせる
議会は現在、宗教行事で休会中。4月末に再開するが、首相は〝時間稼ぎ〟の末、最終的に改革を進めるのか、断念するかの判断を迫られる。改革をあくまでも推進すれば、国内の混乱は収まらず、安全保障や対米関係にも大きな支障が出る。
かと言って断念すれば、連立政権を担う極右政党が離脱し、政権が崩壊する可能性が高い。大きなジレンマに直面しているのだ。
しかし、結局のところ、自らの汚職裁判を有利にするため司法制度改革を進めるしかないのではないか。その場合、世論の理解を得るため、また少しでも反対派の反発を抑えるよう、妥協を図るかもしれない。
極右の「宗教シオニズム」(党首スモトリッチ財務相)や「ユダヤの力」(党首ベングビール国家治安相)の連合の他、宗教政党はあくまでも譲歩をせずに改変を進めるよう要求するのは必至だ。ネタニヤフ首相はこうした勢力をなだめるため何らかの見返りを与える公算が強い。
「それはパレスチナ人に代償を払わせることではないか」(アナリスト)。スモトリッチ財務相は最近、「パレスチナ人など存在しない」と暴言を吐き、世界中から批判された。
ベングビオール国家治安相はパレスチナ自治区のイスラエル併合を主張し続け、新たな治安組織「国家警備隊」創設の了承を首相から得ている。この新組織はパレスチナ人対策の民兵軍団になるかもしれない。
司法制度改革の先行きには不透明感が漂っている。だが、結果がどうなろうともそのしわ寄せは最も弱いところに来るだろう。昨年末以来、イスラエル軍はパレスチナ人に対する急襲作戦を強化、パレスチナ側もユダヤ人の襲撃で応酬し、これまでにパレスチナ人80人が死亡した。司法制度改革に伴う暴力の連鎖は止まりそうにない。