安倍晋三政権が掲げる成長戦略においても、農地集積は重要施策の1つで、都道府県ごとに「農地中間管理機構(仮称)」を設置するとしている。09年の法律改正で農地利用集積円滑化団体を設置し、農地の貸借を活性化させ集積の促進を図ったが、土地の出し手と受け手のマッチングがうまく機能していなかった。
この機能を強化しつつ、(1)地域内の分散した農地を整理し担い手ごとに集約させ、(2)受け手がすぐに見つからない場合に、見つかるまでの間、農地の預かり・管理を行い、必要に応じて基盤整備もし、受け手がその後農業をやりやすい環境を作る。こうした役割を機構に担わせる考えだ。
農地貸借をより活性化させようとする発想は、「熊本県の取り組みと方向性として近い」(農林水産省経営局農地政策課の渡邊毅課長)。機構の設置に合わせ、国は法改正や予算要求などで都道府県のバックアップを図る予定だ。
農業経済を専門とする東京大学大学院農学生命科学研究科の本間正義教授はこう解説する。
「熊本県の取り組みは他県にも参考になる。国が設置する機構にも期待したいが、農地集積を全国的に広めるためには、組織の設置だけでなく、集積や換地を条件とした全額公費での大規模な整備などパッケージで政策を展開することが必要」
TPP(環太平洋経済連携協定)時代になると、農地集積の必要性がさらに増す。「TPP交渉では、農産物の関税撤廃を今後20~25年で行っていくことになる可能性がある。そうなると、高齢化した農家や零細農家で、農地を手放す動きが加速するだろう。農地を受け手へスムーズに仲介することができるかどうかが、農業の競争力向上に直結することになる」(本間教授)。
*関連記事:『TPP コメも聖域にするな 「特区」で農政改革を』(本間正義)
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