ついに7月23日からTPP(環太平洋経済連携協定)交渉会合に参加する日本。農協や与党・自民党内から重要品目を関税撤廃の例外とするよう強く求められ、「聖域」が認められる余地があると宣言した安倍晋三政権。果たして実際にはどういった交渉を展開していくのか。農業経済の専門家に、交渉の展望とTPP後に必要な農業政策を聞いた。
――いよいよ日本のTPP交渉参加が7月23日に迫っています。交渉参加国との間で、日本が主張する5分野の農産品を関税撤廃の例外として認めさせることは本当に可能なのでしょうか。
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2月の日米首脳会談において、オバマ大統領との間で聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認し、安倍晋三首相はTPP交渉参加に踏み切った。しかし、交渉参加国は原則として関税撤廃の例外を認めていない。例外を設けるにしても、極めて限られた品目であろう。こうした中で、5分野すべてを認めさせることは事実上不可能である。カナダやオーストラリア、ニュージーランドなどの交渉参加国が示す「日本が関税撤廃の例外を求めれば、合意は得られない」といった反応もそうした背景に基づく。
「聖域なき関税撤廃を前提としない」と政権は日本国内に宣言しており、政治的に持つのかと思う向きもあるかもしれない。しかし、最大の争点となるコメでさえも、関税撤廃までの期限を、自由貿易交渉において通常最長10年とされる期間を15年とするなどして、「例外」を勝ち取ったとお茶を濁す可能性も高い。
もしくは、関税を残せる代わりに、GATT・ウルグアイ・ラウンド交渉時のように「TPP版」ミニマム・アクセス米として、米越などコメ産出国からの一定量の輸入をバーターにするか、あるいはコメや砂糖などごく一部の重要品目に限り棚上げにして交渉をひとまず妥結させる、という可能性も考えられるだろう。
――日本の農業にとって、交渉で聖域を認められないのは、やはり不利益となるのでしょうか。
このような政治的、外交交渉的落としどころを、国内の農業団体などは批判するだろう。しかし、いまのあり方を維持し、構造改革を忌避し続けて、日本の農業に未来があるだろうか。