TPPは、関税の撤廃といった市場アクセスの分野だけでなく、様々な分野において経済活動の共通ルールを作ることができ、モノ・サービスの貿易自由化を超えてグローバル化を次のステージに進められる好機だ。この交渉参加によって日本はグローバル化の効果を最大限に手にする機会を得たと言える。
(写真:ロイター/アフロ)
それなのに交渉でコメなどの例外化を求め、その代償として自動車など日本が本来強い工業品目で他の参加国に譲歩する誘因を招くのは本末転倒だ。また、たとえ今回のTPP交渉参加で例外が認められたとしても、世界的な自由貿易協定の拡大・深化の動きは今後も変わらない。
コメも例外措置とせず交渉テーブルに載せて、今回の交渉を、農地法を含めた抜本的な農業の構造改革に踏み出す契機とすべきである。
――6月に政府方針としてまとめた成長戦略においても、農地集積の拡大を図る目的で都道府県ごとに「農地中間管理機構(仮称)」を設置する方針を示す一方で、農業への企業参入の規制緩和など抜本的な改革は見送られました。
これまでも企業の農業参入などの改革に向けた議論がなされてきたが、規制が残され本格的な自由化は果たされないままだった。農地法の理念そのものが変わらないからだ。
霞ヶ関は全国を平均値で一律のものとしてとらえ、伸びる農家の成長機会を奪い、退出すべき零細農家を温存した。また、農地所有を農家に限り、農外からの参入を規制してきた。農地を農業経営の生産要素ないしは経営資源としてとらえ、発想を転換しないと、現在の状態を根本的に変えることはできない。
こうした農地法の理念を変えられれば、ゾーニング(用途別の土地利用区分)を徹底して農外利用や転用を防ぎ、農地利用の監査制度などを設けた上で、大規模な農地集約も可能となるだろう。農外企業の参入や他の農業者との共同事業の展開も推進される。さらに、零細赤字農家がダラダラと生産を続けられる要因となっている、優遇税制措置といった課題の改善にもつながっていく。
しかしいくら改革を唱えてもいきなり農地法という大きな枠組みを変えるのは困難だ。まずは実態を変えていき、それを積み重ねることによって将来的に法律を変えるところまで持っていくべきであろう。
実態を変えるためのアイデアとして、2つ挙げられる。