小川:変わった野菜も、種を蒔けば誰にでも作れます。難しいのはそれで生計を立てることなんです。
ヘンな野菜を作りたい!
小川:実は完全に有機に移行しようと思っていて、有機JAS規格(有機食品のJAS規格に適合した生産が行われていることを登録認定機関が検査し、認定された事業者のみが有機JASマークを表示できる認証制度。「有機JASマーク」がない農産物と農産物加工食品に「有機」「オーガニック」などの表示をすることは法律で禁止されている)を取ってみようと思っています。取ってみて、その内容を知りたいという動機ですね。きっと一度認証をとってみれば、それで満足してしまう。飽きっぽいからあまり続かない(笑)。でもやらないとわからないし、やっぱり何事も経験から話したい。想像だけで話したくないんです。
さっき畑で見てもらったカルドンゴッボ(cardon gobbo : イタリア北部などで伝統的に栽培されてきたアーティチョークの一種。茎を下茹でしアク抜きをしてパスタやバーニャカウダなどにすることが多いが、品種によっては生のままオリーブオイルと絡めて食べることもある)も、「作ったらどうなるんだろう?」というのが動機ですね。もしかしたら売り物に化けるかも知れない、自分で栽培方法を編み出せるかも知れない。でも、ダメだったらいいや(笑)。
久松:売れるかどうかではなく、まずは純粋に栽培がうまくいくことが喜びなんですか?
小川:カルドンゴッボについてはそうですね。何がなんだかわからない。ネットで調べれば出てくるかも知れないけど、まだ調べてもいません。どういうものなのか、出荷の段階でどういう状態になっていればいいのかもわからない。
当たり前ですけど「種を蒔いてみたけどダメでした」では営業はできない。モノができてはじめて「こんなものもあるんですけど」とお客さんに見せられる。そこが自分の強みにもなる。いきなり大量に作るのはリスクが高すぎますけど、少量でやってみて、作れるようになったら販売する。買ってくれる人がいるなら徐々に増やす。でもみんなが作るようになったらやめる。その繰り返しですね。
そのときの過程がのちのち活かされる可能性が少しでもあるなら、労力をかけてしまう。そこが自分のいいところでもあり、悪いところでもありますね。
久松:小川さんがカルドンゴッボを極める前に、ほかの人が作りはじめたら冷めちゃう?