2024年10月10日(木)

有機農家対談 「ぼくたちの農業」

2013年8月1日

小川:みんなの技術が90%くらいまでに到達したらきっと冷めますね。実際に価値もなくなってしまうし。

久松:わかるわかる。

小川:みんなができるってことは、まあ、希少性だけの作物だったんだと。

久松:でもいくらアーティチョークやチコリが好きでも、カルドンゴッボまでは行かないな。あまり金の匂いがしない(笑)。でも、小川さんの姿勢はすごくいい。

小川:とりあえずなんでもありでやってみて、畑に来てくれた人にとっては価値のないものもあるだろうけど、価値のあるものも探せると思うんですね。そこを強みにしていきたいですね。

久松:スタンダードなものから、名前を聞いたことのないヘンなものまで揃えたい、ということですか?

小川:経営の基本は大玉のトマト、ナスやキュウリですね。サトイモや八頭とか、年配の方しか調理できなさそうなものでもちゃんと揃えておく。そこまでやった上で、変わったものはちょっとしたお楽しみに作っておく。そのときはお楽しみですが、そこから経営の柱として本気になれる可能性のある野菜は必ずある! そう思いながらやっています。

自分たちだけのシーンを作ればいい

小川:茅ヶ崎や鎌倉の農家は意識的に地域野菜のブランディングをしていると聞きますよね。先日もその視察に誘われたんですけど、行かなかったんです。

 ぼくとしてはブランディングよりも、作りたい野菜を作れるかどうかが大事なんです。作れる段階になってからなら、見に行く価値があると思う。鎌倉で作られているビーツやコールラビの種もよく蒔くんですけど、まだしっかりとは作れない。教えてもらわなくても作れるようになってから、つまり一段階上のものを教えてもらえる自分になってから、視察に行く価値があると思うんです。

久松:茅ヶ崎や鎌倉はブランディングだけをしているわけじゃないとは思います。小川さんみたいな変態農家が何人かいる(笑)。作っているモノもいろいろで、普通のものも作っている。

 でも売り先が自分の地域にあるのはいいですよね。茅ヶ崎では朝市があって、農家が軽トラに野菜満載にして行って、それなりの単価でも人によっては一時間もかからずに15万円くらい売っちゃうらしいです。軽トラがカラになっちゃう。そこまでになるのは10年以上かかったそうですけど。


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