若手農家二人による「ぼくたちの農業」対談の第2回。「農業を守れ!」という世間の声に、彼らが抱く違和感とは――。
競争がおもしろい農家を育てる
久松:「ボランティア農家」がタダみたいな値段で投げ売りして、専業農家がやっていけなくなるようなことって、ほかの業種では起きないですよね。オムレツをタダでふるまう洋食屋がほかの店を潰す、そんなことはない。それは、洋食屋は家賃を払っているからですよね。農地は固定資産税や相続税で優遇されているから、それができてしまう。そこは問題だと思っています。
小川さんも街の中で農業をやっているから賛同してもらえるかもしれないけど、ぼくは農地法撤廃論者なんです。いきなり撤廃とはいかないだろうけど、徐々に適正な競争環境ができてくれば、ボランティアの農家は退出していくはずなんです。
みんなが小川さんみたいなちゃんとした農業をやっているならば、国策としての生産に寄与しているという意味で、なんらかの優遇措置を受けることにも社会的なコンセンサスが得られるのかもしれない。でも、「農家」といわれている人の多くはそういう人たちじゃない。優遇があるおかげで「タダでもいい」という人が出てしまう、これは政策としては間違っていると思います。
「農家は我々の生命を自己犠牲で守ってくれているのだから、私たちが守らなければいけない」という市民派的な感覚が、実は優良な農家を殺しているということは、すごく強調したいことです。
いわゆる土地利用型農業、コメや穀物などは厳しい面もあるでしょうね。大規模なコメ農家は地域のブランド力に貢献し、縛られている側面があるので、いわば社会的コストも負っている。そこにいきなり固定資産税の厳格適用をされてしまったら厳しいのもわかります。経過措置は必要だと思いますが、このままでいいとはとうてい思えない。
小川:ぼくは自由競争、超大好きなんですよ(笑)。これだけ農業が発展しないのは、競争がないからなんですよね。大学に入ったのが、コメの輸入自由化でタイ米が入ってきた年だったんですけど、あれからこれだけ時間が経っているのに全然変わっていない。「いきなり自由化すると農家が潰れる。徐々に力をつけていこう」とやってきて、いまだにこのありさまなのか、と。