2024年12月12日(木)

オトナの教養 週末の一冊

2013年3月8日

 2011年3月11日の東日本大震災以降、放射能汚染による食品への影響が心配された。このことによる風評被害は未だに多くの農家を苦しめている。千葉県の柏市は「ホットスポット」だとマスメディアで騒がれ、柏産の農作物が敬遠される状況が続いた。そんな中、柏産の農作物の信頼を取り戻そうと「安全・安心の柏産柏消」円卓会議が立ち上がった。その1年の活動を総括した書が『みんなで決めた「安心」のかたち』(亜紀書房)だ。今回、著者で円卓会議のメンバーでもある筑波大学大学院人文社会系国際公共政策専攻准教授で社会学者の五十嵐泰正氏に話を聞いた。

――柏というとストリートミュージシャンが多く、その盛り上がりをメディアで取り上げられた時期がありました。五十嵐さんも参加されていたストリートブレーカーズとはどんな組織でしょうか?

五十嵐泰正氏(以下五十嵐氏):1990年代末から柏には多くのストリートミュージシャンが集いました。他の地域では、そうしたミュージシャンを煙たがった地域もあるようですが、柏では逆に街の魅力として位置づけていこうと当時の商工会議所の青年部が考えました。そこで、柏市の商工振興課のバックアップを受け、ストリートブレーカーズという組織が発足します。若者を柏の街づくりにいかに参画させるかということをテーマにした団体です。

『みんなで決めた「安心」のかたち――ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』 (五十嵐 泰正 著、 「安全・安心の柏産柏消」円卓会議 著、編集)

――東京で言うと、街の機能としては町田に近いのかなというイメージがあります。

五十嵐氏:もともと柏は都内へ通勤や通学する人たちのベッドタウンで、現在では東京へ行かなくても地元でいろいろなモノが揃うような街です。その辺は町田や立川あたりと似ているのではないでしょうか。地元で衣食住が事足りるようにしようというコンセプトは、ストリートブレーカーズでも08年頃から意識するようになりました。それまでストリートミュージシャンなど柏の魅力を外へ発信していこうと考えていたのですが、そういったエンターテイメントにしても地産地消的に支援していこうと、内への発想も重視するように変わったのもこの頃です。

 またストリートブレーカーズには、イチゴ農家やコメ農家を営むメンバーもおり、彼らを通じて柏の農家との交流が始まりました。すると、柏はカブの生産が全国1位など近郊農業が盛んで、農産物のレベルも高い土地であることが実感できるようになりました。地産地消をエンターテイメントで出来たならば、野菜でも地産地消に貢献しようということで09年から野菜市「ての市/ジモトワカゾー野菜市」を開催しました。


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