2024年4月27日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年8月6日

 (3)アベノミクス

 国民が経済政策に最も関心を抱くように、安倍総理にとって、経済は最重要課題である。安倍総理は、デフレから脱却し景気を浮揚させるため、「3本の矢」を放った。アベノミクスは短期的には成功した。それは、円安、株高、製造業の回復、輸出の増加に表れ、1-3月のGDPは年率4.1%の成長率を記録した。

 が、アベノミクスにも問題がないわけではない。株が乱高下し、円が落ち着かない時期もあった。それに、アベノミクスは、財政支出と金融緩和に依存しているので、既に巨額の財政赤字を抱える日本が、更に赤字を膨らませることになると言う不安の声も聞かれる。

 アベノミクスに関して、安倍総理が直面する課題は2つ。1つ目は、アベノミクスの長期的成功は、3本目の矢である構造改革にかかっているということだ。雇用、医療、農業、エネルギー分野での構造改革が必要であるが、これらの産業は強力な利益団体を構成している。

 2つ目は、アベノミクスの短期的成功は、一般の消費者にとっては、必ずしも好ましいものではなかったことだ。円安で輸出が伸びても、輸入品の価格は上がった。特に、エネルギーの値上がりは、家計を圧迫する。また、ローンの金利も上がった。給与が値上がりしない限り、消費支出の増大は遅いだろう。そして、もし、安倍総理が予定通り2014年4月の増税を行なえば、消費者の財布の紐は固くなりかねない。しかし、もし安倍総理が増税を延期するなら、彼の財政健全化のコミットメントに疑義が生じる。

 ここでも、安倍総理には、良い選択肢はない。参議院選挙で頼りになる利益団体は、アベノミクスの長期的成功には、反対勢力となり得る。同様に、アベノミクスの短期的成功は、消費者にはマイナスで、長期的成功を妨げることにもなりかねない。

 (4)自由民主党

 上記の課題だけでも、安倍総理にとっては、かなり重要な問題であるが、最大の問題は、彼が総裁を務める与党自民党内から出てきそうである。まずは、安倍総理の政治基盤であるが、安倍政権への支持率が50%以上あれば、党は支えてくれるだろう。が、もし改憲や原発、アベノミクスで上手く行かず支持率が低下すれば、それは、安倍政権の基盤を揺るがす。これを避けるには、政治課題に適切な優先順位を付け、根回しを、国民、利益団体や党に対して、周到に行なうことである。それには、慌てず、政治手段を賢く活用することだ。


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