2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年7月19日

 英フィナンシャル・タイムズ紙の6月30日付の社説‘Putin’s fragility is a moment for western resolve’が、プリコジンの反乱によりプーチンの権威が失墜した混乱に乗じてウクライナへの支援や安全保障を強化する決意を示すべきであると論じている。要旨は次の通り。

反乱阻止に貢献した部隊の前で演説をするプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 プーチンのウクライナ戦略は、ロシアが西側諸国よりも長く持ちこたえられるという信念に基づいているようだ。クレムリンの論理では、キーウに対する西側の支援は時間とともに衰えるのは避けられず、その間わが物と見なす領土を再征服するモスクワの決意は損失に耐えられるというのだ。ところが、プーチンは今、プリゴジンの反乱の後、自らの権威を立て直すために奔走している。西側諸国は モスクワの混乱に乗じて、キーウへの支援を加速させるべきだ。

 プーチンは非常に危険な指導者である。彼は第二次大戦後の欧州で最大の戦争を引き起こし、国際規範を踏みにじり、核兵器による威嚇というタブーを破ってきた。キーウに時期尚早の「和平」を迫りプーチンに軍事的利益の大半を保持させることは、将来、プーチンがウクライナや他の国に対して新たな攻撃を仕掛けるのを助長するだけかもしれない。

 西側指導者は、どのような行動をとるにせよ、モスクワがさらに不安定化する可能性に備えなければならない。しかし、プーチンの脆弱さが明らかになったことは、より大きな決意を示す時が来たともいえる。ウクライナが今日、より多くの支援を受ければそれだけ、次の米国での選挙までに実質的な進展を遂げる可能性が高まる。特に、ロシアの指導者が長期戦に耐える能力を疑い始めれば、キーウの望む条件でクレムリンをテーブルに着かせることができる。

 英国は、引き渡しを始めたが、他のウクライナの同盟国も弾薬と長距離ミサイルの供給を早めるべきだ。北大西洋条約機構(NATO)の欧州連合(EU)加盟7カ国は、西側の戦闘機の提供とウクライナのパイロットの訓練を約束しており、ウクライナの反攻における重要なギャップを埋めるための準備を加速させるべきだ。

 西側諸国首脳は、キーウに対し、ロシアの侵略に対する将来の安全保障を提供する用意があることを示すべきだ。そして、戦争が終結し条件を満たせば、ウクライナがNATOに加盟する確かな道へと導くべきである。行動が、これ以下にとどまれば、落ち込んでいるプーチンを元気付けてしまうことになる。

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 プリコジンの反乱の余波はいまだ流動的であり、情報の中には操作されたものや希望的観測もあろうが、鉄壁の国内支配体制を誇ったプーチンの権威が揺らいだこと、プーチンは必死で立て直しを図っているがその影響は今後無視できないものがあることは分析筋の一致した見方であろう。


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