2024年12月22日(日)

プーチンのロシア

2023年6月27日

 6月23日夜、ロシアで起きた民間軍事会社ワグネルの反乱事件は、ワグネル側がベラルーシのルカシェンコ大統領の仲介を受け入れて一応終了した。ワグネルと正規軍との対立は既に周知の事実であったが、プーチン大統領はあえて対立解消に努力しなかった。

基地に戻るワグネルの戦闘員たちに別れを告げる市民ら(ロイター/アフロ)

 下手に調停に動けば自分に火の粉が降り注ぐ、面倒な揉め事に介入したくない、放っておけばいずれ収まる――。そう考えていたのかもしれない。

 しかし、時あたかも、ウクライナ戦では苦戦を強いられている最中だ。ロシアはほぼ国家の存亡をかけて戦っている時に、大統領はこの反乱を防止できなかった。この事実は残る。

 国際世論を見ると大統領の指導力に大きな疑問符が付いた(”Putin's Weakness Unmasked” David Remnick,June 24, 2023)。大統領は実は弱い指導者だというレッテルが張られた。今後どうなるのか? 特に心配を募らせているのは中国だ。

プーチンの帝国主義への密かな熱情

 もはや旧聞に属するが、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は今年2月、米国CBSテレビでこう述べた(Transcript: CIA director William Burns on "Face the Nation,"  FEBRUARY 26, 2023  CBS NEWS)。なお同長官は2005年より3年間駐ロシア米国大使をしていた外交官である。

 「ウクライナでは過去10年間、民主主義化が進み、政治的、経済的、安全保障の観点から西側へ向かう動きが強まった。ロシアがこのウクライナの動きをコントロールできないなら、ロシアはもはや大国ではないとプーチン大統領は考えた」

 プーチン大統領にとっては、民主主義がロシア国境近くまで侵食し、それを阻止できなければロシアはもはや「大国」ではないというのだ。22年2月にロシアが運命的なウクライナ侵攻を開始した動機はこれだという。

 結局のところプーチン大統領自身が「ロシアは放っておくと民主化する」と固く信じていたのだ。大国ロシアの名誉を賭してでも民主化を封殺すると考えていた訳だ。


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