2024年5月20日(月)

Wedge REPORT

2023年8月1日

 もともと能作の商品が好きだった中島さんは、自宅から近い能作の門を叩いた。採用面接で当時、8歳と5歳の子どもがいることを伝えると、会社は「残業できなくても大丈夫、勤務時間はフレキシブルですから」と言ってくれた。ただ、その頃の事務職の就業時間は9時から18時。保育園へのお迎えに間に合わないと諦めかけたが、職人と同じ勤務時間帯の8時から17時での勤務を提案され、就職が決まった。

 子どもの送迎は、保育園だけで終わらない。小学生や中学生になれば習い事の送迎が必要になる。思春期に入ればメンタルのケアも必要だ。勤務時間が8時から17時までなら、子どもと向き合った生活を送ることができる。

能作の中島里美さん(Wedge)

 今、中島さんは朝5時30分に起きて朝食を作り、子どもたちを学校に送り出す。小学生の子は集団登校のため、集合場所まで付き添って「いってらっしゃい」と言ってから出勤すると決めている。日常のなかで感じる幸せの一コマだ。

「ママの会社の商品だね!」

 能作の主な両立支援の内容は、①本社に隣接する企業主導型保育園(内閣府所管の企業向けの保育園)に子どもを預けた場合、利用料の4割を会社が負担する、②事務職の所定の出勤・退勤時間を家庭の事情を考慮して選択可能にする、③1時間ごとの有給休暇の導入――。

 年次有給休暇は原則1日単位だが、労使協定が結ばれていれば1時間単位での取得が可能になっている。この時間単位の年休取得制度を導入している企業は22%と少ない(労働政策研究・研修機構「年次有給休暇の取得に関するアンケート調査」2020年)。

 能作では1時間ごとの有給休暇制度が、「ごく普通に」使われて子どもの世話に充てられている。入学式や運動会はもちろん、授業参観や夏休み前の保護者会は数時間で終わることが多く、1時間単位の有給休暇をフル活用。ちょっと仕事を抜けて学校に行き、また仕事に戻ることができる。自宅と職場が近い中島さんは、昼休みに自宅に帰って夕食の下ごしらえをしたり、洗濯物の取り込みを済ませたり。そうしたやりくりが出来るのも、子育てしやすい職場環境があるからこそ。

 「今こうして子育てしながら正社員として働いていて、改めて自分は仕事が好きなのだと分かりました」

 能作の商品はテレビや新聞で取り上げられることも多く、子どもは「ママの会社の商品だね!」と喜ぶ。中島さんは「誇りを持てる仕事だと実感する機会が多いです」と話す。


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