能作では、定期的に体験イベントなどを開催しており、顧客だけでなく社員の家族も本社にある工場を訪れる。そこで働く職人の姿を見た子どもたちは「ママのお仕事、楽しそう」「パパ、かっこいい」と目を輝かせるという。鋳物職人の世界は高齢化が進み廃業を余儀なくされるなど、そもそも女性の職人が稀有な存在。そうしたなかで能作には5人もの女性の職人がいて、男性も含め子育て真っ最中の職人が現場で活躍している。
こうした子育てしやすい環境づくりは、能作千春社長が小学生の2児を子育て中であることが大きく後押ししている。能作社長は「家族にも仕事を見て理解してもらい、家族が円満であると良い仕事につながると思うのです。育児との両立はもちろん、仕事を楽しんでできる職場環境があることが重要で、子育てを仕事のマイナスに思ってほしくない」と、働きやすい職場作りに注力する。
美容師を辞め美容ディーラーに
能作と同様、美容商材卸の「モリタ」も子育てしながら働きやすい職場作りを実現し、未就学児のいる女性を中途採用した共通点がある。
モリタで美容ディーラーとして働く谷口弥生さん(27歳)は、中途採用で2021年に入社した。モリタで働き始めた時、子どもは4歳だった。
1935年創業のモリタは、富山県と石川県を地盤に美容室やエステサロンにパーマ液やコスメなどの美容商材を卸している。美容商材を提案・販売する営業職は「美容ディーラー」と呼ばれ、美容師向けの講習会やイベントも開催。美容室の経営コンサルタント業務も行う。富山市の中心部にあるプロ用美容商品専門ショップ「ベレーザ・エ・ヴィータ」ではプロ用の美容用品を購入できる。ブライダル向けの和装レンタル事業なども行う。
谷口さんは、高校卒業後は美容師として働いていた。20歳で結婚・出産したが勤めていた美容室は繁盛店で、食事をとる時間もない状況だった。そして美容師の世界は、土日祝日が稼ぎ時。子育てを優先したいと、美容師を辞めた。多忙だった店舗に美容ディーラーが訪ねてくると、パッと明るい雰囲気になることに魅力を感じ、「美容ディーラーとして、美容に関わる仕事を続けることができるのではないか」と考えた。
モリタの会社説明会を訪れた谷口さんは「子育てと両立できる会社だと思いました」と就職を希望した。モリタも、「仕事に対する熱意がある。ディーラーの仕事が好きであるなら」と採用を決めた。
美容ディーラーは、美容室が店を閉めた後で商材についての勉強会を行うことが多く、仕事の終わる時間が遅くなりがち。モリタは子育て中でも働き続けられるようワークライフバランスを図り、産後の女性の就業継続が100%となっている。