社員の提案によって都度、つくられてきたモリタの両立支援は、①ライフスタイルに合わせた勤務時間の設定、②1日6時間労働の短時間正社員制度の導入、③有給の看護休暇と介護休暇の導入、④完全週休二日制に加えて祝祭日を休業日にし、子どもの行事が多い土曜に有給休暇を取りやすくする、⑤育児中の社員の業務の見直し、⑤子どもの看護など急な休みとなった時のフォロー体制の構築――が柱となる。
厚生労働省の「雇用均等基本調査」(2021年度)では、看護休暇を取る事ができても無給であるケースが65.1%を占めるが、モリタでは2022年4月から看護・介護休暇を有給にした。社員が看護休暇を取ったことを周知することで、「ああ、お子さんに何かあったんだな」という理解が進み、社員同士が助け合うムードができるという。
「子どもが小学校に入ったばかりの時はよく熱を出したため、看護休暇があって助かりました。子育て中の社員が多く、休んだ時のフォロー体制があって安心できます」
仕事は人につくもの
谷口さんは、朝は子どもが学校に行くのを見送ってから8時15分に出勤し、17時15分に退勤する。通常、本社勤務は8時30分~17時30分の就業時間だが、17時30分に仕事を終えて帰宅するのでは、夕食の支度に間に合わないからと15分前倒しの勤務時間で働く。帰宅すると子どもが「お腹空いた、ご飯、ご飯」と言って待っている。夕食を作り、風呂に入れて、宿題を見て――。子どもが寝るまで息つく暇もないが、充実した毎日を送っている。
美容ディーラーの仕事はいわゆるルート営業で、担当するサロンを回り、美容師の要望を聞いていく。たとえば、どこのサロンに行っても髪質が良くならないという人のため、谷口さんが提案した商材によって髪質が改善した時などのやりがいは大きい。
「ちょっとした会話から信頼関係を築いていき、美容室から相談してもらえる関係になりたいと意識しています。『お悩み解決型の提案』を目指しています」
谷口さんは現在、第二子を妊娠中で産休、育休を取得後に復帰予定で、「これから結婚や出産を迎える社員も多いので、その時、私も相談に乗ることができるような先輩になりたいです」と笑みを浮かべた。
両立支援に取り組む意義について、角崎誉栄社長はこう話す。
「会社が長く続いているのは、顧客のことを知り尽くし、共に歩んできた歴史があるからです。美容の卸という世界は人と人の信頼関係で成り立っていて、仕事は人につくもの。それは社員が育児で辞めることなく、長く働いてこそ継承されるものです」