2024年5月20日(月)

Wedge REPORT

2023年8月22日

 また、環境情報開示の世界的なプラットフォームであるCDP(00年に英国で設立された国際環境NGO)は、すでに世界各地の機関投資家などの要請を受け、環境に関する質問書を企業に送付し、回答を公開している。発足当初は「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)」という名称で、気候変動に特化していたが、09年から水リスク対応などを指す水セキュリティー、11年から森林減少対策などを指すフォレストに関する質問書の送付も始めた。

 近年ではESG(環境・社会・企業統治)情報開示の重要性の高まりから、参加する機関投資家数、質問書に回答する企業数は増加している。22年は、680以上の金融機関(運用資産総額130兆ドル超)、280以上の主要購買企業・団体(6兆4000億ドルの購買力)がCDPを通じて企業の情報開示を要請した。一方、企業は1万8700社以上が質問書に回答し、その時価総額は合計60兆8000億ドルと世界の株式市場の時価総額の約半分を占めた。国別の上位5カ国を見ると、米国(3700社以上)、中国(2500社以上)、日本(1700社以上)、英国(1400社以上)、ブラジル(1300社以上)だった。

 日本で水セキュリティー最高位のAリスト認定の企業は18年の8社から22年に35社になった。この5年間の水セキュリティーAリスト企業を業種別に見ると、のべ133社のうち、ソニーグループや富士フイルムなど製造55社(41%)、キリンホールディングスやサントリーホールディングスなど食品・飲料・農業25社(18%)、LIXILグループや東レなど素材25社(18%)となっている。

メタやマイクロソフト
拠点内で水循環システムを導入

 情報公開だけでなく具体的な取り組みを始めた企業もある。それが「ウオーター・ポジティブ」という活動で、消費するより多くの水を供給することを目指す。どのようにそれを実現させるかと言えば、水使用量を減らす活動(節水や再利用)、水供給量を増やす活動(地表から地下に水を浸透させる、森林や湿地の保全、雨水浸透など)を組み合わせる場合が多い。

 インスタグラムやフェイスブックを運営するメタはデータセンターの冷却水として大量の水を使用している。データセンターの高密度化に伴い消費電力が増えているからだ。冷却システムに障害が発生すればサーバーに悪影響が及ぶため、冷却効率の高い水冷式が採用されている。そのため米ニューメキシコ州の中央部に位置するアルバカーキのデータセンターでは年間5万トンの水使用権を持つ。

 メタは水利用の効率を高めるとともに、施設がある流域での涵養プロジェクトを始めた。ニューメキシコ州、カリフォルニア州など6州で湿地の保全などを行い、年間32万トン以上の水を地表から地下へ浸透させるという。


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