すると、ロシア向けがなくなっても大方の予想に反することが起きました。下のグラフをご覧下さい。14年のノルウェーの水産物輸出は、減少どころか過去最高を更新し、前年比12%増の688億ノルウェークローネ(約9600億円)に達したのです。
ロシアがノルウェーから水産物の輸入を停止したのは、偶然にも中国は日本からの水産物の輸入を停止した8月。その年のノルウェーからの水産物輸出金額は、減るどころか過去最高を更新したのです。減少分は他の市場が吸収し、特に欧州連合(EU)向けが16%も増加した影響が大きかったです。
ノルウェーサーモンへの影響は?
下のグラフは、ノルウェーのサーモン輸出金額推移を表しています。最大の影響を受けるのは、ノルウェーの養殖鮭業者とみられていました。しかしながら、14年に前年度まで最大級の顧客だったロシア向けがなくなっても、結果として他国に展開することで問題となりませんでした。コロナ禍で20年は一時的に減少しましたが、その後も輸出金額の伸びは止まりません。
一方で、ノルウェーからの水産物の輸入を停止したロシアは、アトランティックサーモンとトラウトの養殖を増やす政策をとっており、21年には13.7万トンとなっています。養殖量全体では、35.7万トンと、10年間で倍以上も伸びています。輸入停止からすでに9年経過していますが、輸入再開どころではないことはご承知の通りです。
世界の水産物貿易事情
特定の国が水産物の輸入を停止しても、世界全体では人口増加に伴い、水産物需要は増え続けています。また、国際貿易も下のグラフのように増え続けています。なお一直線に伸び続けるわけではなく、凸凹を繰り返しながら上昇を続けて行きます。
世界の人口は20年から30年にかけて7億人増加する見通しで、一人当たりの水産物消費量は年間約20キログラム(頭・内臓・骨も含む)です。7億人に20キロを掛けると1400万トンになります。この数量は米国・ロシア・日本の総漁獲量の約1400万トン(2021年)と同じ数量になります。
もちろん、そんなに供給量を増やすことは難しいので、養殖水産物の生産量を増やしたり、価格を上げて需給バランスを取ったりすることになります。なお人口増加が著しい国々は必ずしも経済力も伴って成長しているとは限りません。このため、サーモンやホタテのような比較的高級な水産物が輸入対象として引き合いが増加するとは限りませんが、水産物全体では引き合いが強くなっていく見通しです。