2023年12月6日(水)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年2月28日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 釧路から銚子にかけての太平洋側でサバが不漁となり、サバ缶休売がニュースになっています。一方、北海道や青森などで大量のマイワシが打ち上げられたり、各地でマイワシが大漁だったりで、サバが獲れないならイワシ缶があるでは? と思われる方がいるかも知れません。

国産イワシ缶と大西洋サバを使用したサバ缶(筆者提供)

 わが国ではサンマ、スルメイカ、アジなどをはじめ5年前、10年前、20~30年前と比較すると、さまざまな魚種の水揚げ量が大幅に減ってしまっています。そんな中で、マイワシは漁獲量全体の減少のスピードを緩めているほぼ唯一の存在です。なお、漁獲量が減り続けているのは日本独特の傾向で、世界全体では増え続けています。

 マイワシは、脂がのった大きなものは焼いても、刺身でも、加工しても大変美味しく、もちろん缶詰めにしても美味しい魚です。

マイワシの大半は養殖のエサに

 下の写真をご覧下さい。同じマイワシでも、まるで違う魚のように見えます。上は非食用の小さなマイワシ、下は大きなマイワシです。サイズはそれぞれ20~40グラムと80~100グラムといったイメージです。

小型と大型のマイワシ(筆者提供)

 次に脂肪分で比較してみましょう。上の魚の写真とグラフの個体は、イメージですので異なりますが、同じマイワシでも20~40グラムの小さいマイワシでは脂肪分が5%未満なのに対し、80~100グラムになると20~30%もの脂肪分になっていることがわかります。

マイワシの脂肪分比較(出所)千葉県 写真を拡大

 僅か1週間ほどしか漁獲時期の差は変わりませんが、小さいマイワシと大きなマイワシでは、脂ののりとその価値は大きさによってこれほど違うのです。

 丸々としたマイワシだけを獲ればよいのですが、残念ながら現場はかなり違います。マイワシの水揚げが多い釧路港では、約9割ものマイワシが、非食用に回っています。丸のままフィッシュミール工場に運ばれて魚粉や魚油に加工されていくのです。


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