5月に農林水産省から2021年度の年間水揚量が発表されました。困ったことに417万トンと記録が残る1956年以降で過去最低を更新しています。サンマ、サケ、スルメイカを始め、かつての国内水揚げの主力魚種が次々に消えて行く傾向が鮮明になっています。
ところが、対照的に世界全体の水揚げ数量は増加傾向にあります。下のグラフは、世界全体と日本の水揚げ量を比較したものですが、両者の傾向が異なるかが明確に分かります。
水産物の水揚げが減少した理由としてよく挙がるのが、海水温の上昇です。確かに海水温の上昇は、エサになる動物性プランクトンの減少など資源状態に影響を与えます。これは農作物の出来高が、天候に左右されるのに似ています。環境要因が自然に与える影響は否定できません。ところで……です。
わが国の水産資源には、不都合な真実がいくつも隠れています。前回「稚魚放流では増えてない 魚にもっと自然に産ませよう!」は稚魚放流について解説したところ、「1000」を超えるシェアをしていただきました。恐らくデータを基に分析すると「震災でヒラメの放流が減ったら、逆に資源が大幅に増えていた」ことに驚いた方が、少なくなかったかと思います。
今回は、魚が減った理由としてよく出てくる「海水温の上昇」と水産資源についての関係を分析します。
日本周辺の海だけ海水温が上昇しているのか?
海水温がゆっくり上昇していることは事実です。ところで下のグラフは、左が日本やアラスカ(米国)を含む北太平洋。右がノルウェーや欧州連合(EU)を含む北大西洋の海水温の変化を表しています。
実は海水温の上昇は魚が減って大きな社会問題となりつつある日本も、魚の資源管理が成功し、水産業も漁業も発展を続けるノルウェーやアラスカ(米国)でも、傾向は同じなのです。