2023年12月4日(月)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年7月11日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 サケ、ヒラメ、シシャモ、ニシンなど、日本では人工的に孵化させた稚魚を放流して、水産資源を増やそうという試み種苗放流が、全国で約70種も行われています。恐らく、多くの皆さんは、その効果に何の疑問を持つことなく、孵化させた魚の放流に期待していることでしょう。筆者も、その一人でした。

水産資源を増やすためにサケをはじめ稚魚が放流されるが、必ずしも効果があるわけではない(足立聡/アフロ)

 ところが、世界に目を向けてみると、水産資源をサステナブルにしている国々と、わが国が行っていることは、どうやら違うことがわかりました。「間違っている前提に基づく正しい答え」が魚の資源が激減している日本では随所に見られます。その一つ、種苗放流について解説します。

 例えば、日本ではシシャモやニシンの種苗放流を行っています。国産シシャモは漁獲量の激減が止まらずで、資源は壊滅寸前です。

 また、ニシンも増えたといっても、それはかつて50万トン漁獲されていた数量が5000トン程度に減り、最近では1.5万トン程度になっているに過ぎません。ニシン御殿で栄えた全盛期の漁獲量から、その僅か1%になってしまい、それが3%になっただけのことです。

 ヒラメなどの高級魚と異なり、多獲性魚であるニシンのこの量は、ノルウェーでは2〜3日で漁獲できる量なので、大した違いではありません。

 一方で、アイスランド、ノルウェーといった国々ではニシンもシシャモ(カラフトシシャモ)の漁獲量は桁違いに多いですが、種苗放流をしているとは、聞いたことがありません。資源量が減ってきたら、科学的根拠に基づいて、漁獲枠を減らしたり、禁漁にしたりといった数量管理の措置を徹底して、必ず資源を復活させています。

 種苗放流の代表例であるサケについても、サケの漁獲量が日本と対照的に高水準でMSC認証を持つアラスカ(米国)では、コンセプトが大きく異なります。

 それでは、種苗放流の実態が分かる例として、誰も疑問を持っていないであろうヒラメのデータをグラフにして実証してみましょう。

ヒラメの数字で分かる種苗生産の効果の低さ

 日本の水産資源管理や政策は基本的にPDCAがないので、資源状態が悪くなったら、海水温上昇や外国などに責任転嫁されてしまいます。このため、効果的な改善策が見えてきません。そして国民が知らない内に、悪化だけが進んでいます。

(出所)水産研究教育機構「ヒラメ太平洋北部系群の資源評価」 写真を拡大

 ヒラメは種苗放流をしている代表的な例です。上のグラフでわかるように、ヒラメ(太平洋北部系群)の資源量は、東日本大震災後に激増しています。放射性物質の影響で漁業が大幅に制限されて、漁獲圧力が減ったため、つまり「ヒラメを獲らなかったので増えた」ということです。


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