同じく、マダラ(太平洋北部系群)も、東日本大震災後に一時的に増えました。同じ年に生まれた魚の資源が、翌年も残って増えていることが下のグラフを見れば一目瞭然です。しかしながら、漁獲枠もなく、幼魚まで獲ってしまい再び資源量は激減してしまいました。
少し増えても、幼魚に手を出して魚が成長する機会も、産卵する機会も奪ってしまう。これでは同じ誤りの繰り返しです。海水温上昇や外国が悪いということではありません。
東日本大震災が見せた資源回復の〝真実〟
下のグラフをご覧ください。種苗放流によって資源が増えるという概念が覆されます。オレンジの折れ線グラフが資源量の推移で、青線がヒラメの稚魚の放流数です。
2011年に東日本大震災で種苗放流が影響を受けました。11年は、ほぼゼロ。12~14年までは、震災前の約400万尾の4分の1以下の放流数でした。種苗放流が資源を増やしていたのなら、ヒラメの資源はこの間に減少するはずでした。
しかしながら、グラフからヒラメの資源は減るどころか、大幅に増えていたことがわかります。これは、震災で漁船の操業が減少したことで、ヒラメが増えたということなのです。
震災という特殊事情があったからこそ、このように種苗放流の効果に疑問を呈することが明確にできました。ただ、他魚種も似たり寄ったりであることが考えられます。その根拠は、沿岸漁業でさまざまな魚種が大きく減り続けているということです。現実に目を背けてはいけません。
ポイントはもう一つあります。それは、水産資源は自然に産卵させておけば、魚は増えるということです。
魚を減らすことなく獲り続けられる量(MSY=最大持続生産量)を意識しながら漁業を行うことが、国連海洋法でも持続可能な開発目標(SDGs)14(海の豊かさを守ろう)でも基本です。
この基本をわが国では長らく守って来ませんでした。世界と比較し、魚が減ってしまった結果を見て下さい。皮肉にも震災という大自然が「強制的な一時的禁漁」という資源回復のための大ナタを振るったのです。