2024年4月25日(木)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年7月11日

サケの漁獲量から見える欧米諸国との差

 日本では、21年のサケの漁獲量は僅か5万トンで、大不漁が続いています。2000年代には20万トンあった漁獲量はみる影もありません。しかしながら、アラスカやロシアでは不漁どころかその逆です。

 アラスカでは、サケ類の漁獲量が21年は23万トンと近年3位の豊漁。ロシアでは同53万トンと過去10年で2番目の大豊漁となっています。アラスカでは自然産卵を重視(自然:採卵=66%:34% Fish & Game 2018)している一方で、日本ではできるだけ採卵して放流する手法を取っており、とても対照的です。

 北海道のサケ(シロサケ)で11~14年にかけて世界的な水産エコラベルであるMSC漁業認証の取得が目指されましたが断念していました。

 その際に、資源状態が悪い場合については、MSCの認証の規格の中に「天然サケの資源量を回復させる方策が実施されていること。その回復のための増殖は、ほとんど行われていないこと」という項目があります。資源状態が悪い場合に採卵による増殖をほとんど行わないということを守っていたら、今のようにサケが減っていなかったのかも知れません。

 皮肉なことにMSC認証を持つアラスカとロシアのサケは、日本とは対照的に今年も好調な漁が続いています。

日本の水産資源回復でやるべきこと

 種苗放流に効果がないとまでは言えません。魚の生態研究などには大いに役立つのでしょう。しかしながら、水産資源管理に成功している北欧、北米などでは、ほとんど行われていないのが現実です。また、最近のウナギの放流に関する論文で「日本各地でウナギの放流が行われているが、効果検証は進んでいない」「2年間で約95%の個体減少が観察されました」とあります。もっと、客観的な事実をもとに検証を進め、現実を直視して対策を取るべきでしょう。

 東日本大震災の前後のヒラメの例では、種苗放流が減っていた時期の方が、資源状態が良くなるという分析結果でした。日本の水産資源を守るための本質的な手段は、種苗生産ではなく、科学的根拠に基づく数量管理に尽きるということなのです。

 
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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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