2023年12月6日(水)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年6月24日

»著者プロフィール
著者
閉じる

片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 魚が減ったのなら養殖すればよいのでは? と考える人は少なくないでしょう。ところで、水産業に占める養殖の位置付けをご存知でしょうか?

魚の養殖で漁業資源の問題は解決されるのか(by wildestanimal/gettyimages)

 世界の生産量(天然物+養殖物)は、約2億トン(2億1400万トン)。内訳は、天然(9100万トン)と養殖(1億2300万トン)です(FAO 2020年・海藻類と餌料用の非食用水産物を含む)。養殖物は、全体の57%を占め、生産量を押し上げています。

 一方で天然物は、わが国のように資源量も漁獲量も減り続ける国もあれば、欧米・オセアニアを始め、持続可能な開発目標(SDGs)を意識し、資源が豊富で、かつサステナビリティを考えて漁獲する国がいくつもあります。これらの国々は、短期的には漁獲量を大幅に伸ばすことはしません。

 このため、天然物の漁獲量の伸びはあまり期待できません。養殖物なしに世界全体の水産物の供給を賄うのは困難な状況なのです。

魚が減っている現実

 わが国では、世界の趨勢と対照的に、毎年漁獲量の減少が続いています。世界の中でも突出して悪化している現実は深刻です。2021年の養殖を除いた天然物の漁獲量は319万トンで、記録が残る1956年以降で過去最低を更新しています。残念ながら、魚が激減しているので、魚が獲れなくなっているのであり、大漁祈願しても良くならないのです。

 ところで国際的な視点での日本の立ち位置を知らせる報道は、ほとんど見たことがありません。SDGs14(海の豊かさを守ろう)における最大持続生産量(MSY)での資源管理の期限は2020年まででしたが、欧米やオセアニアなどとは異なり、その達成にほど遠いのが現実です。


新着記事

»もっと見る