2022年12月2日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年6月24日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 丸のままフィッシュミールにする魚として、北欧ではイカナゴの成魚やブルーホワイティング(タラの一種)などがありますが、これらは食用価値が低い魚です。アラスカでは、スケトウダラなどから身や卵などの可食部を除いた残渣(ざんさ・残り)を、養殖用のフィッシュミールに加工しています。

日本の養殖魚のエサのあるべき姿とは

 わが国でも、エサの製造には、食用価値がある魚に対しては、北欧や北米のように丸のままの未成魚ではなく、主に成魚の残渣を使うべきでしょう。幼魚に比べ、大きな成魚には価値がありますが、全てが可食部ではありません。大きな成魚から頭、内臓、骨を除去し、残りを食用とするのです。

 日本で水揚げが増えているマイワシを例に挙げてみます。仮に、小さなうちは獲るのは止めて成長させ、可食部を除いた残りをフィッシュミール(エサ)にすれば、どれだけ付加価値が高まるでしょうか!

 しかし現状では漁獲枠が多過ぎて、一度に大量水揚げされてしまい、処理も食用向けに間に合わないということが起きています。例として、主要水揚げ港の釧路ではマイワシの実に約9割がフィッシュミールになっています。

 1990年代に釧路には20を超えるフィッシュミール工場があったものの、資源激減でほとんどが潰れてしまいました。また工場が増えて減るといった同じことを繰り返して良いのでしょうか?

 マイワシは、環境要因によっても資源は大きく増減しますが、減少し始めたら早めに手を打って回復を待つことが不可欠です。例として、米国西海岸では、資源の減少を懸念し2015年から禁漁とし、資源回復を待っているところです。必ず回復することでしょう。

天然魚の資源とのバランス

 結局のところ、養殖物といっても、天然物の資源量と密接に関係があるのです。そして、もととなる魚の資源をサステナブル(持続可能)にして行くことが何よりも大切で、全てはそこから始まります。資源が潤沢で水産資源管理制度が機能していれば、フィッシュミール向けでも食用向けでも漁業者の自由です。

 漁業者・漁船ごとに漁獲枠が科学的根拠に基づいて決まっていれば、漁業者自ら考えて、水揚げ金額を上げようとします。そして、経済的な価値を考えて丸のまま幼魚を獲ることを止めて行くことになります。

 前述の釧路港の例でも、漁船や漁業者ごとに漁獲枠が科学的根拠に基づき厳格に決まっていれば、漁業者の方から水揚げの分割と分散がなされ、食用になる比率が増えます。ただし、打出の小槌のように、漁獲量が増えるというやり方ではそうなりません。

 漁獲枠が機能すれば、資源の無駄遣いはなくなって行きます。分かりやすい例がサバです。日本ではサバの約4割(2010~19年の平均)も非食用(養殖用のエサ)になっているのに対し、ノルウェーでは99%が食用となっています。これは漁獲量が決まっているのに、わざわざ価格が安い、小さなサバを漁獲してしまう漁業者などいないからです。

 日本でも、エサになる魚の持続性を最優先に考えて、養殖を拡大していく戦略を検討していく必要があるのではないでしょうか?

 
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 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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