2023年2月4日(土)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年7月21日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社社員

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会) 『日本の漁業が崩壊する本当の理由』『魚はどこに消えた?』(ともにウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著、『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

海水温の上昇は責任転嫁に過ぎない

 水産資源管理が機能していないことを海水温の上昇に置き換えてしまうと辻褄が合わない現象が起きます。

干したイカナゴ(筆者提供)

 

 イカナゴの資源が激減した理由が海水温上昇だとすると、なぜ青森(陸奥湾)という水温が低い北の漁場で資源が崩壊した数年後に、伊勢湾(三重県)、播磨灘(兵庫県)、大阪湾、仙台湾、福島といった北と南が入り混じりながらイカナゴがいなくなってしまったのか?

 なぜマイワシは寒冷な気候の方が増えやすいといわれている一方で、同じ北海道の道東沖で獲れていたサンマは、海水温の上昇で激減しているのか?

 サンマは、道東沖の暖水塊が来遊を阻害していると言われています。しかし、その沖合の公海上でもサンマ資源が激減している理由は何か? それは、日本の海の周りは海水温が高いということよりも、むしろサンマ資源そのものが禁漁状態に近いほど、減ってしまっているからなのです。

 海水温上昇は水産資源に影響を与えてしまいます。だからこそ、資源に悪影響を与えるのであれば、その分も考慮して漁獲量を考える必要があるのです。つまり、予防的アプローチを行って、水産資源をサステナブルにする努力が不可欠なのです。

 資源が減っているために、漁獲量が減ってしまう。その対策は、大漁祈願ではありません。科学的根拠によって厳格に管理するということなのです。

 ノルウェーをはじめ、その恩恵を享受して漁業や水産業が発展を続ける国もあれば、残念ながら日本のように資源管理が機能していないことを、海水温上昇や外国に責任転嫁してしまう国もあります。

FAO悲観的に見る日本漁業の将来

 下表は世界食糧農業機関(FAO)が発表した2020年と2030年の漁獲量(天然物+養殖物)の予測データです。全世界で天然物が13.7%の増加予想となっています。しかしながら、日本はマイナス7.5%の減少と非常に悲観的な予測となっています。

 世界の海で日本の周りだけは、海水温上昇の影響を受ける特殊な海域なのでしょうか? もちろん、そのようなことはありません。特殊なのは科学的根拠に基づいて来なかったわが国の水産資源管理なのです。

 20年に70年ぶりと言われる漁業法の改正がありました。しかし、せっかくの改正も、資源管理のハードルを下げてしまう傾向があります。

 持続可能な開発目標(SDGs)14(海の豊かさを守ろう)ではMSY(最大持続生産量・魚を減らすことなく獲り続けられる最大値)での資源管理を明記しています。

 しかしながら、資源管理が成功している北欧ではその達成確率を95%と厳格にしているのに対し、日本では50~60%程度に下げてしまう議論が行われてしまっています。これでは、効果がある管理方法とは逆の運用となり、漁業法改正の効果が薄れてしまいます。

 魚が減り続けるわが国で、厳しくするのではなく、その達成率を下げてしまうのは、いかがなものかと思います。将来を考え、サステナビリティに関して、もっと真摯に考える必要があります。

 1972~1988年もの長きに渡り世界最大の漁獲量を誇った日本。悲しいことに、数量が年々減り続け、今では遠い昔のことになりつつあります。ただし、日本には世界3大漁場の一つである海が残っています。そこで水産資源を復活させるかどうかは、他でもないわれわれ日本人次第なのです。

 
 『Wedge』2022年3月号で「魚も漁師も消えゆく日本 復活の方法はこれしかない」を特集しております。
 四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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