2022年12月4日(日)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年7月6日

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真田康弘 (さなだ・やすひろ)

早稲田大学地域・地域間研究機構客員主任研究員・研究院客員准教授

神戸大学国際協力研究科博士課程後期課程修了(博士・政治学)。東京工業大学社会理工学研究科産学官連携研究員、法政大学サステイナビリティ研究教育機構などを経て、2017年より現職。

 2022年6月、4年半ぶりに開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議では6年半ぶりに閣僚宣言を採択、漁業補助金協定を採択した。漁業補助金に関しては01年より規制するための交渉が開始されており、実に足かけ20年以上の交渉に一つの区切りがつけられたことになる。

(Koichi Yoshii/gettyimages)

 協定では違法・無報告・無規制(IUU)漁業に対する補助金の禁止や、適正な水準を割り込み枯渇した状態にある資源の漁獲に対する補助金の禁止などが盛り込まれた。なお、この協定が対象としているのは海洋での漁業に限られ、河川や湖で行われる漁業や養殖業は適用の対象外となっている。

日本が足を引っ張る中国への乱獲規制

 漁業補助金は市場による競争を歪め、過剰な漁獲能力をもたらし、乱獲を誘発する。大量の漁業補助金をつぎ込んで数が膨れ上がった遠洋漁船は、公海や沿岸国の軒先にまででかけ、魚を根こそぎ獲ってゆきかねない。

 ブリティッシュコロンビア大学のラシード・スマイラやダニエル・ポーリーらの研究によると、18年の世界の漁業補助金の総額は354億米ドル。そのうち約3分の2の222億ドルが乱獲を引き起こすまで漁業生産能力を向上させ得る補助金であると推定している 。

 これはわが国にとっても由々しき問題である。例えば中国は12年より太平洋公海域でサンマ漁を開始、当初2014トンに過ぎなかった漁獲量は20年には約20倍の4万2000トンとなっている。マイワシについても太平洋公海での操業が17年に1万トンであったものがわずか3年後の20年には9万2000トンと操業が急拡大している。

 このように遠洋に拡大を続ける中国漁業を支えているのが、漁業補助金である。先ほどの研究では、中国の漁業補助金は総額73億ドルと他国に比べてずば抜けて多く、うち8割の59億ドルが乱獲を誘発し得る有害補助金と推定している。国際的に漁業補助金に足枷をはめることは、わが国の国益にも直結する。

 中国としてみれば、そのような拘束は極力回避したいところであろう。中国は01年にWTOに加盟しているが、翌02年には早くも漁業補助金協定に関する提案を提出し、途上国に対しては先進国とは異なった取り扱いとするよう求めるとともに、全ての補助金を一律に扱うのではなく、貿易や環境に影響を与える度合い等によって分けて扱うこと、インフラ建設などは貿易や環境などに有益なので規制すべきではないと主張した 。

 本来ならば、日本としてはこうした中国などの主張に対して、より強い規制を漁業補助金協定で求め交渉に臨むべきところである。ところが日本は「漁業補助金には悪い補助金もあれば良い補助金もある。禁⽌される補助⾦は、真に過剰漁獲能⼒・過剰漁獲につながるものに限定すべき」と主張し続ける。

 最終的にまとまった協定では、資源が枯渇し乱獲された資源に関する漁業への補助金は禁止する(第4.1条)ものの、その補助金やその他の措置を通じて資源が持続可能な水準に回復するよう目指されている場合には、補助金供与が許される(第4.3条)とされた。重要な例外が用意されてしまったことになる。

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