2024年4月26日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2022年7月6日

 費用便益計算がぎりぎりプラスとされている漁港事業は他にも数多く、北海道の無人島に多額の税金を投じて「避難用漁港」の建設工事を延々と続けている例などもある。本当にそのような事業が必要なのであろうか。

問われる補助金への国際的説明責任

 今回の補助金協定では、加盟国に対してこの協定を実施するに際して取った措置を協定効力発生後1年以内にWTOに通報するよう求めるとともに(協定8.3条)、補助金を供与している漁業の形態、補助金が供与されている漁業における資源状態や漁獲規制措置及び漁獲能力、補助金により利益を受けている漁船名、などを毎年WTOに報告するよう求めている(8.1条)。

 加盟国より報告された情報は、この協定により設立され年2回開催される予定となっている「漁業補助金委員会」で検討され、他の加盟国にも質問の機会が与えられることになっている(8.6条及び9.2条)。こうした漁業補助金に関する情報が集積されることは、補助金の透明化に繋がるとともに、加盟国に対して、例えば乱獲され枯渇した資源に対して補助金が供与されている場合、それは本当に資源回復を目指して行われたものであるのかという説明責任が問われよう。

 もちろんこの説明責任は日本自身にも問われる。「確かに枯渇資源を捕る漁業に補助金を出しているが、その補助金は資源回復を目的とするものなので、この協定の例外規定に合致する」と主張しても、十分説得的な説明を伴わなければ協定違反と批判を浴びる可能性があることに留意すべきだろう。

 そもそもそ補助金は市場原理を歪めるものであるのみならず、その原資は国民の税金である。その拠出は水産資源の持続可能な利用と水産業の持続性にとって必要なものに留めるとともに、わが国周辺の水産資源そのものを持続可能な水準に保ち、乱獲された資源の回復を一刻も早く図る必要があるだろう。

 今回のWTO閣僚会議では、漁獲圧が過剰という意味で乱獲状態にある資源と過剰能力に寄与する補助金などについての規制措置に関して合意が成立せず、次回の閣僚会議での合意を目指し交渉が継続することとなっている。草案 では、漁船や漁船に搭載する機器に対する補助金、燃料に対する補助金、人件費に対する補助金、漁船や漁船員に対する収入補助、魚に対する価格補助等が過剰な漁獲圧や過剰能力に資する補助金として列挙されており、これらに対する補助金を原則として禁止するとされている。交渉の今後の展開が注目されるところである。

 
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