2022年の日本の水産物輸入金額は初めて2兆円を超えました。一方で輸入数量は横ばいか減少傾向です。つまり輸入単価の上昇が続いているのですが、今後も世界人口の増加と水産物の需要量の増加でこの傾向は続きます。食用に出来る魚を非食用向けにするような余裕は全くないのです。
誤解しか生まない自然への責任転嫁
マイワシが増えたので「サンマが獲れない」、そして今度は「サバが獲れない」といったといった報道があります。しかしながら下のグラフをご覧下さい。マイワシが現在よりもはるかに獲れていた1980年代には、サンマもサバもたくさん獲れていました。もしもマイワシがサンマやサバの不漁の原因であれば、1980年代はこれらの魚種が大不漁だったはずです。しかしデータを見ればそうではなかったことが一目瞭然です。
資源量がよくわからなければ、国連食糧農業機関(FAO)の行動規範にあるように「予防的アプローチ」をすることが不可欠です。しかし、わが国ではサバを始め漁獲枠が、漁獲できる漁獲量より多く設定されている場合がほとんどです。このため、ノルウェーなどと異なり、できるだけたくさん獲ろうという意思が働いてしまいます。
水揚げ減少はマイワシのせいではない!
日本の水揚げ量減少は「マイワシの漁獲量が減少したから」という誤解があるようです。下のグラフをご参照ください。青が養殖も含めた全体量の推移。緑がマイワシを除いた推移、そして赤紫はマイワシの水揚げ量の推移を示しています。
緑の推移を見ていただければわかりますが、マイワシの増減に関わらず、減少を続けているというのが実態です。マイワシは減少どころか、全体の減少を必死に食い止めている存在なのです。
水産資源の悪化はすでに価格の上昇や品不足という形で、消費者にも影響が出ています。そのような環境下で、科学的根拠を欠く情報は、資源管理を行っていく上でプラスには働きません。
9年前に「加工処理しきれない大量のサバを漁獲してしまう日本 資源管理も地方創生の機会も台無しに」という記事を執筆しました。資源管理への理解は広まっているものの、問題はまだまだ資源をサステナブルにできる仕組みになっていないということです。
2020年に漁業法が改正されました。やるべきことは「国際的に見て遜色がない資源管理」を行うことです。国は資源管理を推進する意向です。一方で、科学的根拠に基づかない独自のやり方では、資源を回復させることはできません。水産物は国民共有の財産という位置付けで、資源管理を進めて行くことが重要なのではないでしょうか?
四方を海に囲まれ、好漁場にも恵まれた日本。かつては、世界に冠たる水産大国だった。しかし日本の食卓を彩った魚は不漁が相次いでいる。魚の資源量が減少し続けているからだ。2020年12月、70年ぶりに漁業法が改正され、日本の漁業は「持続可能」を目指すべく舵を切ったかに見える。だが、日本の海が抱える問題は多い。突破口はあるのか。
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