大きなマイワシは数が限られるため、価格が上がってしまいますし、缶詰に向けられる量は多くありません。マイワシは7年程度の寿命の魚です。小さなマイワシは獲らず大きく育ったマイワシのみを狙う仕組みにすることが不可欠です。
養殖のエサとして魚粉や魚油は重要です。しかしながら、ノルウェー・アイスランドをはじめニシンを例に取れば、ニシンをフィレ加工して、頭・内臓・骨をフィッシュミールの原料にしています。大きくなれば貴重な食用になる原料を丸のままエサにというのは、漁獲枠が機能している現在では、今は昔の話です。
アラスカのスケトウダラなどでも同様ですが、大きくなれば食用としての価値が出る魚を、可食部を含む丸のままの魚をフィッシュミール処理してしまうのは、非常にもったいないのです。また、成魚になる前の小さな魚まで漁獲してしまうのは、資源への影響もよくありません。
処理しきれない量を水揚げしてしまう問題
マイワシの食用向け比率が低い理由に、水揚げ量が集中する問題があります。冷凍工場や加工場などが1日に処理できる数量を超えてしまうと、鮮度が落ちてしまいます。そこで大量の魚を素早く処理する方法、それがフィッシュミールや養殖のエサ用に冷凍する処理となるのです。
なお、フィッシュミールは必要です。問題は、食用になる可食部含めてミールになってしまうことなのです。
漁獲によっては、大きなマイワシが獲れることがあります。しかし、水揚げ量が集中してしまうと、処理能力の問題で、良い魚でも非食用に回ってしまうことがあります。サバの水揚げ量が多かった時期にも同様に、もったいない漁業が繰り返されてきました。その先に待つのは資源の減少です。
この問題の解決方法は、科学的根拠に基づく資源管理しかありません。漁獲枠そして枠が個別の漁業者や漁船に漁獲枠を配分すること。漁業者が自ら水揚げを分散することを考え、数量ではなく水揚げ金額を増やすことを意識付ける仕組みにすることがとても重要です。
データで分かるマイワシ資源の無駄遣い
下の表は、2021年のマイワシの用途内訳です。知らないところで、75%ものマイワシが食用とならず、丸のまま非食用向け(養殖のエサ)になっています。2021年度のマイワシの水揚げ量は約68万トンでしたので、そのうちの50万トンにも上る計算になります。
さらに言えば、これらのマイワシは大半が小型ですので、数量だけでなくすさまじい尾数なのです。このため、資源量に与える悪影響は小さくありません。
日本の水揚げ量(養殖含む)は減り続けています。2021年は417万トンと比較可能な1956年以降で最低の数量です。世界全体では増加している中で、日本の水揚げ量が減少を続ける事実は、過去の記事で何度も発信してきました。
非食用に回っているマイワシ約50万トンと、同じく非食用に回っているサバ約30万トンを合計すると80万トンとなります。この2魚種の非食用向けだけで、日本の水揚げ量の2割も占めています。どれだけもったいないことをしているでしょうか?