2024年12月31日(火)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年9月20日

 写真の光は、日本の漁船から撮影した、外国船の集魚灯です。光に集まる習性を利用してすくい獲るのが、サンマ棒受け漁です。想像がつかないかも知れませんが、公海上の狭い漁場で、日本漁船も含めた各国の漁船が、少なくなったサンマを狙って日々ひしめき合って操業しているのです。

強烈な集魚灯を使って公海で操業する外国のサンマ漁船(筆者提供)

大漁祈願で何とかならないサンマ漁

 かつて毎年8月末頃から1尾100円前後で、売り場を埋め尽くしていた秋の風物詩サンマ。しかしながら、その光景はすでにありません。「今年こそは!」と期待しても、すでに諦めている方は少なくないはずです。

秋の風物詩のサンマ。今や売り場を埋め尽くす情景を見ることは少ない(筆者提供)

 価格がクロマグロの初セリ価格のようになったサンマ。恒例の初セリ、2023年1月5日の豊洲市場でのクロマグロ(1尾212キロ)の初セリ価格は、キロ17万円でした。一方で23年8月19日の札幌市場でのサンマ(1ケース・約3キロ)の初セリはキロ23万円と、クロマグロの初セリのキロ単価を超えています。

 共にご祝儀相場であり、極々例外な価格です。しかしサンマがクロマグロの価格を超えるなどというのは、数年前まではおよそ想像もつきませんでした。それだけ漁獲量が激減してしまい、サンマの価値が、大きく変わったということなのです。しかも、こうなった主要な原因は外国でも海水温上昇でもなく、資源管理が機能していないからであることは、これまで科学的根拠に基づいて何度も発信してきました

サンマはどこにいるのかご存知ですか?

 下のデータをご覧ください。左のデータは上から03年・13年・23年と10年ごとの資源調査のデータを表しています。円の大きさが資源量を表し、赤が1歳魚、青が0歳魚となっています。サンマの寿命は約2年。東から西へと回遊して来るイメージです。10年単位で見ても、資源が大幅に減少していることがわかります。

サンマの資源調査データと回遊を妨げているという暖水塊の関係
(出所)水産研究教育機構のデータを基に筆者作成  写真を拡大

 日本に近い方から1区・2区・3区と別れています。左下の23年のデータでは1区にはほとんど資源が分布していないことがわかります。これは6~7月頃の調査データなので、実際には下図のように秋が深まるにつれ日本の排他的漁業水域(EEZ)に回遊してくるはずなのですが、ほとんどそうなっていません。

サンマの来遊予想 (出所)水産研究教育機構 写真を拡大

 日本のサンマ漁は、EEZの外側の公海上での漁獲量が95%(21年)を占めています。分かり易く言えば、日本のEEZ内での漁獲はほぼなく、上図2区の公海上での漁で、ほぼ終了しているのです。公海上には、中国・台湾といった外国漁船が操業しています。

 外国船が洋上で凍結するのに対して、日本の漁船は漁港まで鮮魚で持ち帰ります。しかもその距離は片道1000キロメートル以上で、期間は3日程度。日本の漁船が往復と水揚げで1週間程度も費やす一方で、外国漁船は帰港することなく洋上で操業を続けます。これでは、物理的に獲り負けてしまうのも当然です。

 資源量が多ければ漁場が広範囲に広がるため、漁獲圧は緩和されます。しかしながら資源が少なければ、漁場は狭くなり、漁船は狭い漁場でひしめき合って獲り合います。これが、サンマ漁の実態で、資源がよくなるはずはありません。

 ここで上図右のデータを見てください。北海道と三陸沖に暖水塊があってサンマの回遊を妨げているというものです。しかしながら、そもそも漁場はこの暖水塊から遥か彼方の公海上です。報道などで日本に回遊する前に外国漁船が漁獲してしまうとお聞きになったことがあるかと思います。しかしすでに公海上の資源も激減し、遠くに行けばたくさん獲れるということではないのです。


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