危惧されるサンマ漁業の未来
下のグラフは、サンマの漁獲量推移を表しています。赤が日本、緑が台湾、青が中国です。2000年以前は約8割を占めていた日本の漁獲シェアが、22年になると2割を切ってしまいました。
資源管理を機能するために不可欠なのは、いまだに決まっていない科学的根拠に基づく国別のTACです。漁獲枠を国別に配分することは、将来にわたる国益が絡みます。このため合意は極めて難しいのです。さらに過去ではなく最近の漁獲実績を基にした話し合いになる可能性が高く、シェアが大きく減ったことは負の遺産となってしまいます。
台湾や中国が漁獲実績を増やしてしまう前に、国別TACの設定交渉を始めるべきでしたが「時すでに遅し」です。これらの国々は、サンマの漁獲の為に漁船も配備・建造しており、容易に引き下がりません。獲っていた昔の話をしても、今の話が帰ってくるだけでしょう。
マイワシが原因ではない
サンマやサバが獲れないのは、マイワシが多いからといった報道を聞いたことがあるかも知れません。下のグラフは、サンマとマイワシの漁獲推移をグラフにしたものです。マイワシ(オレンジの折れ線グラフ)の漁獲量が現在よりはるかに多かった1980年代には、たくさんのサンマも獲れていました。
仮にサンマが減った原因がマイワシであれば、サンマの漁獲量は今よりかなり少なかったはずです。マサバが減った原因がマイワシだという報道も聞いたことがあるかも知れませんが、これも同様に、1980年代にはマサバの漁獲量は潤沢でした。
日本では、一般的に資源量に大きな変動を与える漁業や、中長期の漁獲量データをあまり考慮せずに、資源動向を評価する傾向があるようです。このため漁業という最大要因をあまり考慮せずに分析してしまうと、原因が海水温上昇などの環境要因に責任転嫁されやすく、現実と異なるおかしな分析結果となってしまいます。
また、国連食糧農業機関(FAO)の「責任ある漁業のための行動規範」にある予防的アプローチはあまり考慮されていないとみられます。このためか、まるで埋蔵金があるような資源評価や、資源管理が機能している北欧では考えられない大きな漁獲枠が設定されてしまっています。