2024年5月19日(日)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2023年9月20日

資源管理になっていないサンマのTAC

 下のグラフは、サンマの漁獲可能量(TAC)と漁獲量の推移です。漁獲枠が減少していますが、それ以上に漁獲量が減少しています。

サンマのTACと漁獲量推移 (出所)水産庁資料を基に筆者作成 写真を拡大

 こうしたTACと漁獲量の相関関係は、資源管理が機能している国々の魚種ではあり得ません。米国のスケトウダラや、ノルウェーサバなど、TACというのは、実際に漁獲できる数量よりもはるかに少なく設定されているのが、資源管理が機能している世界の常識です。

 サンマのTACを減らして資源管理強化で国際合意してきているといった類の報道がありますが、減らしたTAC自体が依然大きすぎるので、削減の効果は残念ながらないのです。それどころか、日本漁船も含めた各国の漁船がお互いに漁船が見える狭い漁場で我先にと、ひしめき合っているのです。科学的根拠に基づいた国別のTACを設定しなければ、資源崩壊は避けられません。

上がり続けるサンマの価格

 下のグラフをご覧ください。青の折れ線グラフが漁獲量で、赤の点線が魚価の推移を表しています。06年からのデータですが、キロ100円もしなかった魚価がキロ600円と大幅に上昇していることがわかります。大幅な魚価上昇の原因は、大幅な漁獲量の減少に他なりません。

サンマの漁獲量と魚価の推移 (出所)水産白書 写真を拡大

 資源管理が機能していないために、資源が減っています。資源が減ることで漁場が遠くなり、消費者に届くまで鮮度面で時間がかかります。また、漁獲量が少ないために、従来は養殖のエサにしていた非食用のサイズまで、格上げして消費者向けに回すことになります。

 このため、価値が高くないサヨリのような小さくて細いサンマが高値で供給されています。さらに漁業者にとっては、単価が高くても数量が少ないために水揚げ金額が上がらずで、誰にとってもサンマ漁が負の連鎖に陥っているのです。

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