日本が宇宙先進国の「一極」であり続けるためには、民間企業の存在感も欠かせない。
アストロスケール(東京都墨田区)はスペースデブリ(宇宙ごみ)の除去など、これまでなかった「軌道上サービス」という新たな分野を開拓した世界初のベンチャー企業だ。
「スペースデブリは地球温暖化よりも喫緊の課題」と創業者兼最高経営責任者(CEO)の岡田光信氏は言う。地球の衛星軌道上には運用を終えた衛星やロケットの破片など、さまざまな「ごみ」が存在している。その数は現在、10cm以上のもので3.4万個、1cm未満のものは13億個ともいわれ、さらには秒速8kmで飛び回っている。すでに、デブリと運用中の衛星との衝突やニアミスが頻発しており、今、宇宙は危険な状態だ。
アストロスケールが採用するデブリの除去方法の一つは、まず、高速で複雑な動きをするデブリに安全に衛星を接近させ、動きを観測し、追跡する。そして磁石を活用して捕獲し、大気圏に突入して焼失させるというものだ。
この高度で緻密なデブリ除去技術を同社は自社で開発し、世界で唯一の存在となっている。だが、岡田氏は技術開発だけでなく、それと並行して法規制づくりの主体となる各国政府や国際的な団体への働きかけも欠かさない。
「公園へのポイ捨てであれば、税金によって回収したり、自治体がルールや罰則を設けたりできるが、宇宙には国境がない。そのため、世界での法規制づくりといった、技術と併せて解決しなければいけない課題の難易度も非常に高い」と話す。
「誰も手をつけなかったこの問題に取り組み始めた当初は〝異端児〟扱いだったが、今年のG7サミット(主要7カ国首脳会議)で取り上げられるなど、この問題が世界共通の課題として認識され始めた。妥協することなく、このまま駆け抜けることが大事」と、情勢の変化に手ごたえを感じる。
新規性だけではない
先駆者に求められるスピード感
米国主導のアルテミス計画など、政府出資で月面探査が行われている中、ispace(アイスペース)は今年4月に民間企業として世界で初めて月面着陸に挑み、世界の注目を集めた。
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