2024年4月24日(水)

ルポ・少年院の子どもたち

2013年10月24日

 「交代制になって、職員が宿直や早番遅番と変わりながら指導に当たるようになったのです。非行の子たちは、相手を見て判断しますから、ただ優しく接していると弱いと思って舐められてしまうんです。福祉施設の統廃合で、たとえば知的障害児童施設で働いていた職員なども多く茨城学園にやってきていました。前の職場とのギャップに戸惑い、子供たちとうまく接することができず、脅されて、心が壊れかけてしまうようなケースもありましたし、規則違反を見て見ぬふりをするようになった職員もいました。そうなると『この先生の時はよくても、あの先生の時はダメ……』なんて、職員を見て判断するようになるんです。こうして秩序が乱れて、職員の足並みがバラバラになってしまったのです」

 交代制への移行期、一時的に児童相談所に勤務していた茂木は、茨城学園に戻って職員の意識改革と指導マニュアル作りに取り組んだ。その要諦は寮長というリーダーを作り、そのリーダーのもとチームとしていかに取り組むべきかを徹底して考え抜き、議論を重ね、職員の意識を変えていったことだ。

権利とわがままの混同

生徒を「待つ」ことの重要性。試行錯誤しながら、茨城学園の指導を確立していった

 たとえば、「職員への反抗時に周りの子供たちの態度はどうだったのか?」「周りは引いていたのか、それとも煽っていたのか?」「その時の雰囲気は?」などを職員同士で話し合い、その後の対応を考えた。それまでの個としての対応から、チームとしての対応に変わったことによって規律が生まれた。徹底したことは生活を正し、自分と深く向き合い自らの課題に気づかせるという個別指導である。

 反省中の静養室の孤独の中で気づくこともあれば、雑巾がけなどの単純作業中に気づくこともある。職員は問いかけ、子供たちから出てくる答えを辛抱強く待つのである。「向こうから言い出すまでは何も言いません。じっと待つだけです。座禅と同じですよ」と鈴木副校長は言う。

 自分の考えをしっかりとまとめさせ、正しい言葉で書き、それを相手に伝えて、さらに深く自分に問わせるのだそうだ。こうして態度が改まった後に職員とのコミュニケーションがスムーズになっていく。

 また、入所当時「俺は保護されている身なんだ。てめえらは俺の世話をするのが当たり前だ。それが仕事だろ」とわがまま放題に振る舞うケースも多いという。こうした権利とわがままを混同している者には、権利には義務が、自由には責任が伴うことを厳しく教え込んでいく。こうして茨城学園としての指導体制が確立していった。


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