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2013年10月21日

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松田康博 (まつだ・やすひろ)

東京大学東洋文化研究所教授

1965年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、博士(法学)。防衛庁防衛研究所主任研究官、東京大学東洋文化研究所准教授などを経て、2011年より現職。近著に『現代台湾の政治経済と中台関係』(共著、晃洋書房)など。

 

設置のカギは有能な人材と組織

 次に、実際にNSCが設置される際に詰めなければならない課題について検討してみよう。どんなに素晴らしい任務が与えられても、実際に有能な「人材」が集まり、「組織」がきちんと動かなければ、NSCは絵に描いた餅となってしまう。

 第1は、閣僚レベルの会合を、決して形式化せず、機動的に開催することである。既存の安保会議と同様、NSCは主として首相の諮問機関としての役割しか果たせない。これまでの安保会議形骸化批判の多くは、安保会議が政策決定のゴールでなかったことから生じており、その可能性は新たなNSCでも同様である。少人数で開催できる会議を機動的に利用して、閣僚レベルで情報の共有を図り、何がNSCの扱うべき重要事項であるかについてのコンセンサスを作り、スタッフに指示を出していく必要がある。

 第2は、NSCのスタッフ組織の中枢たる「国家安全保障局」のトップ人事である。無い物ねだり的な理想論を言えば、(1)首相や官房長官の信頼が厚く、(2)外交・防衛・危機管理の複数の官庁で経験を積み、(3)主要国・周辺国の関係者との信頼関係があり、(4)勉強家で国内外の議論に明るく、(5)メディアとのコミュニケーションがきちんと取れる人でなければならない。実際にはこれらの要素の一部または過半を有した有能の士が、複数で首相や官房長官を補佐することになるだろう。

 第3は、スタッフ組織を柔軟に運用して縦割り行政や官民のミゾを打破していくことである。国家安全保障局が各省庁の寄合所帯となり、出身省庁(いわゆる「親元」)にスタッフの顔が向いてしまい、政策の総合調整が停滞したり、危機管理が遅滞したりすることは絶対に避けなければならない。さらに、官僚制特有の硬直化を防ぐために、政府以外の知見を恒常的にフィードバックしていくシステムを作る必要がある。

 第4は、情報部門の統合と活性化である。これまで日本の情報機関は、縦割りの弊害が強く、内閣レベルでの統合は形骸化していたとされる。NSC設立により、戦後日本で事実上初めて、内閣レベルで戦略情報のカスタマーができる。戦略や政策に必要な情報を集め、評価し、選別するために、腰を据えて地域専門家と戦略専門家を兼ねた人材の育成をしなければならない。

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