2022年7月7日(木)

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2013年10月21日

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松田康博 (まつだ・やすひろ)

東京大学東洋文化研究所教授

1965年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、博士(法学)。防衛庁防衛研究所主任研究官、東京大学東洋文化研究所准教授などを経て、2011年より現職。近著に『現代台湾の政治経済と中台関係』(共著、晃洋書房)など。

 

 第2に、NSCは、危機管理の司令塔にならなければならない。米国の同時多発テロや、日本の原発事故を見ればわかるように、現代の危機はリードタイムが短い。たとえ情報が不完全であっても、迅速に省庁間の調整を行い、行動を起こさねばならない。NSCは様々なルートから入る情報を統合し、分析し、適切なオプションを首相に提示することによって、首相の迅速な決定を補佐し、各省庁による執行を監督しなければならない。

 第3に、NSCは「戦時と平時のグレーゾーン」で発生する多様な脅威に対して、軍事的、非軍事的対応をシームレスに取らなければならない。従来、日本は主として武力攻撃や大規模テロのような烈度の高い事態への対処を想定していた。

 ところが現実の世界では、尖閣諸島付近の海域で中国の漁船が海上保安庁の巡視船と衝突するような烈度の低い事態が、米国を巻き込んだ日中の武力衝突にまでエスカレートするかもしれないのである。しかも、尖閣諸島をめぐる情勢は、台湾、韓国、ロシアとの関係とも連動して悪化したのであり、対中国政策の枠だけではとらえられない。

 こうした事態には、国内において、国土交通省、警察庁、地方自治体、外務省、防衛省などの緊密な連携と事前のシミュレーションが必要である。対外的には米国との緊密な連携が緊要であり、中国のみならず、台湾、韓国、ロシアなどにどのようなメッセージを出し、事態を防止し、あるいは事態の悪化を回避していくかなどを、「事前に」決めておく必要がある。一省庁でこうした役割を果たすのは困難なのである。

NSC設置がもたらす意外な効果

 このほか、日本がNSCを設置することによる他国への「アナウンス効果」は、NSCに予想外の任務を生むだろう。すでに日米間で、NSCの担当者同士の相互交流が始まっているが、それ以外の国々とも交流が進む可能性はある。周辺では、韓国、ロシアなどNSCを有する国がすでに米国との交流を進めている。

 ある国のNSC関係者は、筆者に「自分たちがNSCを持って初めて、米国のNSCが何をやっているかを理解できた」と語ったことがある。彼らは「日本に我々のカウンターパートができた」と見なし、日本のNSCとの間で戦略対話を求める動きを見せるはずである。日本政府は、こうした対話を通じて初めて、(周回遅れではあるが)諸外国のNSCが何をやっているのかを理解することになるだろう。

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