オバマのアジア歴訪中止についての議論は、落ち着いていくであろう。東南アジアでは、米国が地域のパワーとして留まるかどうか疑念が残るであろうが、この疑念は、少なくとも40年は続いている。しかし、もっと根本的な現実は、この地域における米国の国益、中国の台頭、ASEANが米国のプレゼンスを必要としていること、そして、ASEAN内部の分裂である。これら全ては、米国の国益を確保するための努力において、十分に考慮される必要がある、と論じています。
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一言で言えば、ASEANはそれ自体ではまとまった南シナ海政策を合意できないから、米国の積極的関与が必要であり、米国のASEAN政策を2010年のクリントンのハノイ訪問の線に戻すべきだ、と言っている論説です。
ただ、現在オバマ政権がそこまで行く覚悟があるとは到底思われません。今回の東南アジア歴訪のキャンセルも、シリア問題の攻撃回避と同じく、もともと気の進まなかった政策を回避できる口実が出来た、という感がなきにしもあらずです。
10月4日の東京における2プラス2の会議の後の記者会見で、ケリー国務長官は次にように答えています。「米国は、中国と密接に協力し、法の支配を見出す、あるいは、対話を見出すことによって、南シナ海行動規範(COC)、貿易、その他の問題について中国と協力している。」「中国の台頭については、中国が国際的な基準や価値に従って関与し、建設的な形で共通の問題に取り組むのであれば、歓迎すべきである。」つまり、クリントン路線に戻る意思は示していません。おそらくは、オバマ自身が参加しても同じ態度であったろうと思われます。
ただ、日本として希望が残るとすれば、今回の2プラス2の会議から得た印象から言っても、第二次オバマ政権は東アジア問題についてはまだ学習過程にあると見られる点です。ケリーもまだアジア政策については、中国との対話以外には特に定見はないようです。カリフォルニアでの米中首脳会談で意思の疎通に失敗したにもかかわらず、クリントン路線に帰る意志も無く、ただ、それを引きずっているだけであるように思われます。
それに対しては、米政府内でも、特に安全保障担当者の間からは、この論説と同様の、より明確な路線を主張する声が強いようですが、オバマ政権も、それに特に抵抗する様子でもありません。その意味で、アジア政策については、学習過程と言ってよいのでしょう。当面、その学習効果が表れることに希望を持つしかないように思います。
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