2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年11月8日

 米ヘリテージ財団アジア研究センターのウォルター・ローマン主任が、10月4日付National Interestウェブサイトの記事で、オバマのアジア歴訪中止をめぐる議論は、米国のアジアへのプレゼンスを維持する必要性という大前提を前にして沈静化するであろう、との見通しを示す一方、南シナ海問題については、ASEANに任せておくことは出来ず、米国の強力な関与が必要となる、と述べています。

 すなわち、オバマ大統領のアジア歴訪中止は、米国の西太平洋における役割にとってどのような意味を持つのか、議論が高まっているが、アジア回帰という「物語」の訴える力は強力であることが、証明されつつある。それは、東南アジアが米国を必要としているからである。ASEAN は、単独で中国と対峙することを望んでおらず、いかなる他のプレイヤーの組み合わせよりも、米国のプレゼンスの方が安心できる。

 しかし、南シナ海問題をめぐり、ASEANの結束という利益のために、フィリピンとベトナムが犠牲にされようとしている。

 この20年間、ASEANは、南シナ海での紛争の管理と解決の基礎を国際法に置くと言ってきたが、フィリピンが海洋法条約に基づく調停を求めた時、ASEANの同胞は沈黙してしまった。

 主権を守るために立ち上がったフィリピンを、中国が孤立させようとしているにもかかわらず、ASEANは、行動規範についての結論の出ない交渉に頼り切り、米国もそれに歩調を合わせている。もちろん、拘束力ある行動規範が出来ることは望ましいが、それには、より積極的で強力な米国の政策が不可欠である。ASEANだけに任せておいては、南シナ海問題に対処することは出来ない。

 オバマ政権は、2010年のハノイでのクリントン長官の線まで、トーンを戻すべきである。ASEANに対して、中国に、より厳しい姿勢をとるよう迫るべきである。長年ASEANは、米国に対して、米中いずれにつくかの選択を求めないよう求めてきた。それを受けて、オバマ政権は抑制的に行動し、実績に乏しいASEANに、領域紛争対処の主導権を与えてきた。しかし、ASEANは、米中いずれかを選択しなければならない。


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