2024年12月23日(月)

プーチンのロシア

2024年3月7日

 ロシアによるウクライナ侵攻が開始から2年を過ぎるなか、徹底抗戦を続けてきたウクライナ国内の団結にほころびが見えつつある。領土をめぐる譲歩に対しては、依然として7割超の国民が反対姿勢を示すものの、最新の調査で自国が「間違った方向に進んでいる」との回答が、開戦後初めて「正しい方向に進んでいる」との回答を上回った。

ミュンヘン安保会議でウクライナ支援を訴えるゼレンスキー大統領(REUTERS/AFLO)

 ゼレンスキー大統領は国際社会に支援継続を訴えるが、米国からの支援の先細りを背景に、東部の要衝からの撤退を余儀なくされた。ゼレンスキー氏は米国批判ともとれる発言をするなど、毅然とした姿勢を崩さないが、さらなる戦局の悪化が進めば、国民の支持も揺らぎかねない。

プーチンは他国にも「破滅的な事態」もたらす

「皆さん方は、これまで大切にしてきた価値というものを、過去に置き去りにしたいのか?ウクライナ人は、決してそのようなことはしない! 今必要なのは、皆さんからの答えだ」

「われわれが行動を起こさなくては、今後2年間で、プーチンは他の国々に対しても破滅的な事態をもたらす。情報機関はすでに、その事実を把握している」

「私たちは領土を取り返すことができる。そして、プーチンを敗北に追いやることができる。それは、いくつもの戦場において証明されたことだ。しかし、そのためには〝われわれの力〟が相手に届かなくてはならない。それを証明してしまったのが、アブデーフカだ」

 2月17日にドイツ南部で開催されたミュンヘン安保会議で登壇したゼレンスキー氏は、約8分間におよぶ演説を行った。ときに胸に手を当てながら、各国首脳に切々と訴えるゼレンスキー氏の演説は、ウクライナが置かれた厳しい状況を浮かび上がらせていた。

 演説が行われた17日、ウクライナ軍は東部の要衝、アブデーフカからの撤退を余儀なくされた。アブデーフカはドネツク州の州都であるドネツク市に近接した小都市だ。2014年には親ロシア派武装勢力に占拠されたが、その後ウクライナ軍が撃退し、以来、ウクライナ側が死守してきた。東部の物流の要衝でもあり、戦況において重要な意義を持つ。

 ゼレンスキー氏は昨年12月に同市を訪問し、撮影した自身の写真を公開するなど、その維持を強く誇示してきた。そのアブデーフカの陥落は、昨年6月に開始したウクライナ側の反抗作戦が、失敗に終わったことを明確に浮かび上がらせていた。

 アブデーフカが陥落した17日、ゼレンスキー氏と電話会談したバイデン米大統領は、ウクライナ軍の撤退は「米議会の不作為の結果だ」と述べてウクライナ支援を含む緊急予算案の可決で遅れる下院を批判した。ゼレンスキー氏はミュンヘンで、ハリス米副大統領との会談し、記者会見で「米議会の肯定的な決断を期待している」と訴えた。緊急予算には、約600億ドル(約9兆円)が含まれる。

 米国の支援は、対ウクライナ支援の約5割を占めているとされ、その凍結はウクライナに壊滅的な打撃を与えかねない。ウクライナ国内では、米国の支援がこのままストップすれば、3月末にも首都キーウの防空システム用のミサイルが枯渇する可能性を指摘する声もある。


新着記事

»もっと見る