また、米政府高官は、今回の凍結が恒久的なものではないことを強調している他、シナイ半島での任務や対テロ分野への支援も継続されることとなっています。
こうした選択的な支持継続というのは、7月に、マケイン、グラハム両上院議員も、軍事クーデターを許さないという米国の原則とエジプトの戦略的重要性を調和させる観点から提案しており、米政府の政策も、ほぼその線に沿っているように思います。
しかし、米国内には、原理主義的な民主主義支持の考え方は牢固として存在します。それがこのワシントン・ポスト紙の社説にも表れています。特に武力弾圧などが起こった場合には、それが表面化する傾向にあります。
ムスリム同胞団という政治勢力は長い歴史を有する強大な勢力であり、また、普通選挙を行えば、宗教勢力が世俗知識階級勢力より多数を占めるのがエジプトの現実です。客観的に見て、シシ政権としては、ムスリム同胞団を政治から排除しない限りは、エジプトの安定を確保できません。その手段は、やがては宗教政党を規制する憲法の制定、そして当面は、米国内のリベラル派の強烈な反対を凌ぎつつ、武力弾圧を続けるしかない、と判断されます。
米国は、建前上は自由民主主義を支持しつつ、実質的にはあまり効果の無い制裁を行うにとどめ、シシ政権による中東安定の役割に期待する以外にないでしょう。原理主義的民主主義支持派が満足するような政策をとれば、米国の中東戦略の要の一つであるエジプトに、最近サウジで表面化したような、強い反米感情を抱かせることになりかねません。
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