2024年4月27日(土)

BBC News

2024年3月29日

国際司法裁判所(ICJ)は28日、イスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザ地区での飢饉(ききん)を回避するため援助物資を流入させるよう命じた。

ICJは、イスラエルは「緊急に必要とされる基本的サービスと人道支援の提供」のために「即刻」動くべきだと述べた。

ガザ地区では、数週間以内に住民が飢饉に見舞われると警告されている。

イスラエル側は、援助を足止めしているという疑惑は「全く根拠がない」と反論している。

同国は、南アフリカがICJに申し立てたジェノサイド(集団虐殺)疑惑も否定。さらに、援助物資の分配に問題があるとして国連を非難している。

南アフリカは昨年12月、武力紛争の際に適用されるジュネーヴ諸条約にもとづく義務にイスラエルが違反していると主張し、ICJに対応を要請。ICJは今年1月に、ガザ地区でのジェノサイドを防ぐためにあらゆる対策を講じるよう、暫定的に命じた

ICJの命令は法的拘束力を持つが、それを執行させる力はICJにはない。

先週には、世界食糧計画(WFP)などが運営する「総合的食料安全保障レベル分類グローバル・イニシチブ」が報告書を公表し、ガザで「壊滅的」な状況が進行していると警告した。

報告書によると、ガザに住む220万人全員が「高水準の深刻な食料不安に直面しており」、5月末までにガザ地区北部を飢饉が襲うと予測されている。

ガザで「飢饉が始まっている」とICJ

ICJは今回の命令で、ガザ地区は「飢饉のリスクに直面しているだけでなく」、「飢饉が始まっている」と指摘。国連のオブザーバーによると、子ども27人を含む31人が、すでに栄養不良と脱水症状で死亡したと述べた。

また、国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官が先週述べた、「空腹、飢餓、そして飢饉の状況」は、「イスラエルが人道支援と商業物資の流入と流通を広範囲に制限し、住民の大半を移住させ、重要な民間インフラを破壊した結果」だというコメントにも言及した。

そのうえでICJは、イスラエルは「即刻、国連との全面協力のもと、大規模な(中略)緊急に必要とされる基本的サービスや人道的支援を滞りなく提供できるよう、全ての必要かつ効果的な対策を取る」べきだとした。

最も必要とされている物資は、食料や水、電力、燃料、シェルター、衣服、衛生用品や医薬品だという。

命令ではさらに、イスラエルはジェノサイド条約に基づき、「自軍がガザのパレスチナ人の権利を侵害するような行為を行わない」ことを保証しなければならないとしている。

ここ数カ月、エジプトからガザに入る境界付近では、援助トラックの長い列が何度もできており、イスラエルが複雑で恣意(しい)的な検査を行っていると非難されている。

イスラエルは先週、ICJに対し、南アフリカの申し立ては「事実の点でも法律面でもまったく根拠がなく」、「道徳的に許されない」として、今回の命令を出さないよう要請していた。

また、ジェノサイド条約に基づきイスラエルが提訴されている、より広範な裁判についても「根拠がない」と否定した。

さらに、イスラム組織ハマスがガザに入る援助物資の多くを持ち去り、国連が市民への分配を怠っていると非難している。

現在の紛争は、昨年10月7日にハマスがイスラエルを襲撃し、約1200人を殺害、250人超を人質にとったことで始まった。

人質のうち約130人はなお行方が分からず、少なくとも34人は死亡したとみられている。

一方、ハマスが運営するガザ地区の保健省によると、イスラエルの軍事活動により、これまでに少なくとも3万2552人が殺された。アメリカのロイド・オースティン国防長官は3月初めに、死者のうち2万5000人以上が女性や子供だとした。

(英語記事 Top UN court orders Israel to allow food and medical aid into Gaza

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c2lw230vwgqo


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