パキスタン国内ではパキスタン・タリバン運動のようなイスラム過激主義者によるテロが増大している。パキスタンは、タリバンがこれらのイスラム過激派のパキスタンへの越境攻撃を支援していると非難しているが、専門家は、そもそもタリバンにイスラム過激主義者を鎮圧する力があるか疑問を呈している。
ISIS-Kは、タリバンを手ぬるいと見なしている数千人のイスラム過激派の戦闘員を惹きつけ、何十件ものテロをアフガニスタン国内で行っている。タリバンがアフガニスタン国内でISIS-Kの掃討を進めるにつれ、ISIS-Kは、国外のネットワークと支援に依存するようになっているらしい。
在ニューヨークのインテリジェンス・セキュリティー・コンサルタントの分析部長は、「ISIS-Kは、欧州を狙っており、特に今年のパリ・オリンピックが要注意であると述べている」とし、米国平和研究所の上級分析官は、「アフガニスタン由来の脅威が続いているのみならず、ある意味、増大している。もっとも警戒すべき傾向は、ISIS-Kは、アフガニスタン国外でテロを計画していることである」と述べている。
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狂信者の集団「ISIS-K」
3月22日に起きたモスクワの大規模テロに対して、プーチン大統領は、ウクライナの仕業説や欧米が背後にいるという陰謀論を主張しているためにこの事件については、ロシアのウクライナ侵攻や欧米とロシアの対立・緊張のコンテクストで語られることが多いが、この事件の本質は、これまでアフガニスタンを拠点としたローカルなイスラム過激主義グループと思われていたISIS-Kの活動の活発化と国際化の脅威である。
「イスラム国」(ISIS)本体は、シリア内戦とイラク戦争の混乱に乗じて両国に支配地域を広げ、14年にイスラム国を宣言し、一世を風靡した。しかし、その後、米国を中心とした多国籍軍の反撃で19年に占領地をほぼ失い、活動は低下した。
ISIS-Kは、そのホラサーン州支部ということになる。現代のホラサーン州はイラン東部の州だが、ISISの立場としては、ホラサーン州とは、イラン東部、アフガニスタン、パキスタン、タジキスタン、新疆ウイグル自治区辺りを含むようである。