2024年5月1日(水)

BBC News

2024年4月18日

ウクライナのデニス・シュミハリ首相は17日、BBCの単独取材に応じ、同国がロシアに敗れれば「第3次世界大戦」が起きると述べた。そして、米議会下院に対し、長らく行き詰まっているウクライナへの追加支援を含む予算案を可決するよう求めた。

シュミハリ首相は米ワシントンで、BBCのスミ・ソマスカンダ司会者のインタビューに答えた。

その中で、アメリカの議員たちが、激しい論争を繰り広げているウクライナへの610億ドル(約8.9兆円)規模の支援が盛り込まれた予算案を可決するだろうという、「慎重ながら楽観的な見方」を示した。

米下院は20日にも予算案の採決を行う予定。この予算案にはイスラエルやインド太平洋地域への資金援助も含まれる。

シュミハリ氏はアメリカの安全保障支援について次のように述べた。「この資金を、昨日の私たちが必要としている。明日でも、今日の私たちでもない」。

「私たちが守らなければ(中略)ウクライナは倒れる」と、シュミハリ氏は付け加えた。「そうすれば、国際的な、国際的な安全保障システムは破壊され(中略)世界中が新たな安全保障システムを見つけなければならなくなる」。

「そうでなければ、多くの紛争やこうした戦争が起こり、最終的には第3次世界大戦につながる可能性がある」

ウクライナが自国が敗れた場合に何が起こり得るかについて、このような憂慮すべき警告を発したのは今回が初めてではない。

同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領は昨年、ロシアがこの戦いで勝利すれば、次はポーランドに侵攻し、第3次世界大戦を引き起こす可能性があると述べていた。

一方でクレムリン(ロシア大統領府)関係者は、西側諸国の脅し文句だとして、こうした主張をあざけっている。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は先月、ロシアがいつか東欧諸国を攻撃するかもしれないとの指摘を「まったくナンセンスだ」と一蹴した。

ロシアがポーランドを含む北大西洋条約機構(NATO)加盟国を攻撃したことは、これまで一度もない。NATO条約の第5条では、加盟国が一カ国でも攻撃を受ければ加盟国全体への攻撃とみなすという、集団的自衛権の行使が規定されている。

停滞するウクライナ支援

シュミハリ氏は、米下院外交委員会のマイケル・マコール委員長(共和党)が最近、共和党の複数議員がロシアのプロパガンダに侵されていると主張したことについて質問が及ぶと、こう答えた。

「私たちは偽情報やプロパガンダが、ここアメリカでも、欧州連合(EU)でも、ウクライナでも、多くの人に影響を与えていることを理解すべきだ」

ウクライナへの追加支援は、米下院共和党の右派からの反対により、数カ月間滞っている。

これらの議員の中には、アメリカとメキシコの国境警備の予算案を可決しないまま、数百億ドル規模の対外支援を行うことに反対している人もいる。

また、これらの保守派議員は、自分たちがクレムリンの手先ではないかとの指摘を中傷だと一蹴している。

ジョー・バイデン米大統領は17日に声明で、議会で予算案が可決されれば直ちに署名し、「私たちは友人とともに立ち上がるというメッセージを世界に発信する」と述べた。

数で勝るロシアとの戦い

ウクライナは、豊富な砲弾を保有し兵力で勝るロシアと戦い続けるため、アメリカや西側諸国からの武器供給に大いに依存している。

数カ月にわたる米下院での支援の行き詰まりは、すでに戦場に深刻な影響をおよぼしている。

ウクライナは弾薬の供給不足と士気の低下から人員でも戦力でも劣勢で、後退を余儀なくされている。

2月には、東部の要衝アウディイウカから部隊を撤退させた

ウクライナ軍のオレクサンドル・タルナフスキー司令官は、敵軍は火砲弾薬の数で10対1で有利な状況だとし、数カ月にわたる戦闘の後に撤退することが「唯一の正しい解決策」だと述べていた。

「破滅的」な状況を回避するために追加の軍事援助が緊急に必要だと訴えているゼレンスキー氏は、これは「人為的な兵器不足」だと非難した。

アウディイウカ陥落は、2023年5月にロシア軍が近隣のバフムートを占領して以来の大敗だった。

英統合軍の元司令官、サー・リチャード・バロンズは最近、ウクライナが2024年にロシアに対して敗北するかもしれないとBBCに話した

「前線のロシア軍は銃弾、砲弾、人員の数で5対1の比率で相手に勝っている。それに加えて、新しめの兵器の導入で、優勢が強化されている。これを利用してロシア軍は徹底的に(ウクライナ軍を)たたいている」

バロンズ将軍は、ウクライナが今年負ける「深刻なリスク」があるとする理由について、「自分たちは勝てないと、ウクライナが思うようになるかもしれないからだ」と説明した。

「その状態にウクライナが達した時点で、守り切れないものを守るだけのために戦い、死ぬことを、大勢が望むだろうか」

ゼレンスキー大統領は2日、徴兵年齢を27歳から25歳に引き下げる法案に署名した。数十万人の新兵を集めるのが狙いだ。

大統領によると、ロシアによる全面侵攻でこれまでに3万1000人のウクライナ兵が殺害された。一方で米当局は、少なくとも7万人が死亡し、負傷者は12万人に上るとしている。

BBCロシア語が独立メディアグループ「メディアゾナ」や有志の人々とともに行った調査では、ウクライナにおけるロシア兵の死者数が5万人を突破したことが確認された

(英語記事 Ukraine warns of WW3 ahead of long-stalled Congress aid vote

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c72pezvqq9vo


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