このようなフィリピン政府の毅然とした態度の背景には、4月11日の日米比3カ国首脳会談の成果があるのだろう。日米比首脳会談では、①三カ国が中国による南シナ海や東シナ海における力による現状変更に反対し、毅然として対応する、②防衛当局間の共同訓練、海上保安機関間の連携を強化する、③日米同盟および米比同盟に基づく米国のコミットメント等について合意、確認が行われた。また、首脳会談に先立つ4月7日、日米比豪の4か国海軍の初の共同訓練も南シナ海で行われた。
中国としては、セカンド・トーマス礁周辺での行動をこれ以上過激化することは慎重にせざる得ないものの、船を引き上げるつもりはなく、おそらく小競り合いが長期にわたり続くのだろう。ただし、中国はフィリピンの国内外における「信用失墜や分断化」をねらって「揺さぶり行為」を仕掛けてくる可能性がある。
中国が、ドゥテルテ前政権との間で、座礁船に届けるのは水や食料のみで船の修理や補修はしないとの合意があり、マルコス政権との間にも同様の合意があったと喧伝していることは、その一例であろう。フィリピン側は、もちろん否定している。
中国は海洋進出を緩めない
中国は経済が変調をきたしているにもかかわらず、24年度の国防予算は対前年比7.2%増と軍拡路線を維持している。また、5月1日、中国の3隻目となる空母「福建」が試験航行を行い、25 年にも就役予定である。4隻目の空母も建造中であり、海洋進出の動きは緩んでいない。
中国の軍事力強化を踏まえ、南シナ海、台湾、東シナ海(中国は尖閣諸島を含む沖縄を狙っている)で戦争を起こさないためには、関係友好国が力を合わせて軍事力と連携強化を進め、抑止力を高めることが、これまで以上に必要である。特に、台湾については、日本の防衛省と台湾軍当局間の対話・協力を開始することが必要な時期に来ているのではないだろうか。