今月は「頭の体操」ができる一冊を選びました。
米国に関連するものが三冊、その他が二冊です。
格差拡大のゆくえ
『ブルックリン化する世界 ジェントリフィケーションを 問いなおす』森 千香子、東京大学出版会、3520円(税込)
東京の都心でも「ジェントリフィケーション」が起きていると知人から聞いた。要するに再開発によって家賃が値上がりすることなどで、元々住んでいた中・低所得者の人たちがよその場所に移らざるを得なくなるという動きだ。著者は研究のため米国で1年間過ごすことになり、その際に住んだのがニューヨークのブルックリンだった。単純な住民の立ち退きだけでなくそこで暮らす人々の日常の様子など、ジェントリフィケーションの問題を多面的にとらえている。
20年間に米国で何があったのか?
ワイルドランド アメリカを分断する 「怒り」の源流 エヴァン・オズノス(著) 笠井亮平(訳) 白水社 3520円(税込)
著者の本を読むのは2度目だ。『ネオ・チャイナ』(白水社)では、まさに「生身」の中国の人々を鮮やかに描いたルポだった。『シカゴ・トリビューン』の北京支局長、『ニューヨーカー』の中国特派員を務めた著者が今回描いたのは母国の姿だ。なぜ、米国はこれほど「分断」してしまったのか。ある人たちの人生をたどりながら、この変化が起きた原点に何があるのかを探っていく。大統領選挙を前に米国の「今」を知ることができる一冊だ。5月末には下巻も発売される。